春の空
木屋 亞万

梅の花が咲き始めた
彼らは驚くほど丸い
つめたい雨の降るなかで
やわさと桃色が
暗黙の春の境界を築いていく

るるるるると鳴く猫は
スプリンクラーに驚いて
もう寄り付かなくなっていた
ただ雀らの遊ぶ庭先
彼らが生み落とした千両も
今では立派な赤い実をつけている

雨を挟んで三寒四温
行きつ戻りつ、夜は寒く
浮かれた春の来るまでは
雨雲は空に重い蓋をする
太陽はこの頃うまく回れない

そんな日々でも春は
いつの間にか僕らの隣に
そっと座り込んでいて
みんなの話を聞いている
いつものおおらかな笑顔のまま
満開の桃色の花を纏って
春は風を浴びているのだ


自由詩 春の空 Copyright 木屋 亞万 2010-02-11 23:56:11
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