恩送り
クローバー

君に、言えずにいる言葉がある
と、僕は思っている思っているけれど、
言えずにいる言葉が何かを忘れている

ホチキスは、どこにあるのだろう
動物の名前だったような気がする

君が留めようとしている紙束にも、言葉がない
ただ、非常口の扉が、描かれている。

ありがとう、すみません、会議室で発表されているとき
無数の動物たちの半分は、寝ぼけ眼で、半分は寝ている。

そして、僕はひとり駐車場でラジオを聴いている
流れてきた楽曲の、ボーカルは君で
僕は、バラバラにならないように、紙束を抱えている。
しかし、窓の外にホチキスを見つける前に
楽曲は、終わってしまう。

会議室では、使われなくなったハンカチを結んで捨てて
出ていく無数の動物たちが、観測されたというのに
君の姿はもう、どこの電波にも、乗ってはこない。


自由詩 恩送り Copyright クローバー 2010-01-17 00:59:52
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