浴室にて夢みる、水溶性
あぐり

浴室で三角座り
シャワーに打たれ続けながら
冷蔵庫からとりだしたばかりの水を
ごくごく ごくごく
やむことなく飲み続けている
目を閉じることなく
一心に濡れながら
渇きを潤しては放出し
このままこのままからだのひゃくぱーせんとがみずになってながれていってしまえばよいの
鎖骨に溜まる水がふと
息を吐いたら溢れてしまったのを
ひどく残念に思っては
三角座りをくずそうともせずに背骨を曲げ続け
シャワーに打たれながら
からだじゅうにすいぶんをとりいれたれながしめをみひらいたままわたしはねむらない
白い白いこの空間にこもりつづけているのは
ゆううつでもかなしみでもなくて
水溶性の命なんです
そうなんです、そうなんだよ、もうそういうことにしておいてくれ
流れていかない排水口なんか知らない
あぁそうだきっときみらがふたをしているんだ
だからわたしはいつまでもここで溺れるしかない
浴室でひとり
水溶性のからだを夢みているの
ただよう香りにだって
色はついていないんです




自由詩 浴室にて夢みる、水溶性 Copyright あぐり 2009-09-12 13:25:32
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