車引き
あおば

                  090709

真っ暗な
点字図書館で
目が覚めた
真っ暗で何も見えない
見えないから
目が無くなった
触れられないから
指が無くなった
怖くて動けないから
立っていられない
足が無くなり
床に
蹲る
指が無く
腕が無く
脚が無くなり
あるものは
何もなくなり
怖くなり
目が覚めた
夢だった
夢で良かった
夢ならば
なにが無くなっても怖くない
と思ったら
恐ろしいことに
夢だけは本当に起こったことだった
それに気がついて
怖くなり
動けなくなり
固まった
暗闇が怖いので
光が欲しい
欲しいものを念じても実現しないのが現実であるのか
念力が弱いので
電球が光らないのか
どちらだか分からない
蛍光灯も光らない
外はまだ真っ暗で
星明かりは点いているが
部屋の中まで届かない
真っ暗で
何も見えない暗闇だ

皆既日食を見に行きたいと思ったのが
昨日のことで
経済的な理由で断念したのが
昨晩で
残念だなという気持ちと
仕方ないという気持ちと
皆既日食を見る機会は
次のチャンスは
此の世では無いのだと気がついて
内心忸怩たるものがあるのだが
なにもかも捨てて
思い切って行動する決心がもてない
そう思うと動けなくなる
しかし動かずに
固まるというのは
気が楽と言えば気が楽で
なにもしなくても時が経つ
時がすべてを解決してくれると思ってしまう
時はそんなに親切なものなのだろうか
そうは思えないが
時はなにも文句をいわないから
信じたい気持ちがあって
それに縋っているばかりなので
一番肝腎なことをメモするのを忘れてしまった
忘れてしまったことをメモしたいと願うのは
無理難題かどうか今考えているところですが
実現すれば有り難いことに思えますが
果たして実現するかどうか分かりませんと
煮え切らないことを考えていたら
車にぶつかりそうになってしまったのです
じつは、それも夢だったのですが
轢かれそうになって怖かったのは事実です
ほろ酔い加減でそぞろ歩くはうちの人
そのうそほんと あたりき しゃりきよ



自由詩 車引き Copyright あおば 2009-07-09 20:38:33
notebook Home 戻る  過去 未来