いつも少し悲しい
あおば

               090709




薄味がお好みでと
店員さんはにこにこ笑う
目の中に在るのはなんだ
酸漿を膨らましている子供たちに別れを告げて
高尾山に登る
新高山○○●の暗合電報は
破いて捨てた
危険は去ったと
説明を省き
口をつぐむので
飼い主たちは安心して
鎖を外して
番犬を自由にしたのだ
そこでページを括るのを妨げられる
薄味がお好みでと
にこにこ笑う顔が近づいてくる
少しだけ遠慮しているようだが
あと何秒残っているか
呼吸を整える振りをして
少し手を伸ばし
胡椒の瓶を掴んでから
ラーメンどんぶりに振りかける
食べるか
啜るか
それとも店員さんに頭からぶちまけるか
秘密情報を胸にしまっておくのは
健康に悪い
今がチャンスだ
それ!
と思ったら
店員さん
子供連れの方に行ってしまって
もうこちらにはふり向こうともしない
薄味が好きなのですと
誰に言うともなく
声に出してみた




「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作、タイトルは、流川透明さん。


自由詩 いつも少し悲しい Copyright あおば 2009-07-09 04:30:01縦
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