罪と罰
1486 106

この世界に生まれたことが罪だというなら
躓きながら藻掻きながら生きることがきっと罰だと思うんだ


直したばかりの大切なものをふとしたはずみでまた壊して
慌てて拾い上げようとしたその破片で血を流した
自分を守るために吐いた嘘で相手も自分も傷付けて
優しくなれない心が悲しみで塗り潰されていった

無くしたものや捨てたものは綺麗に見えてしまうけれど
今ここに存在している自分こそが唯一の真実だから

この世界に生まれたことが罪だというなら
躓きながら藻掻きながら生きることがきっと罰だと思うんだ
誰かを信じてみることは簡単なことじゃないけど
身を寄せながら委ねながら歩んでいくことは弱さなんかじゃない


うんと近くに耳を押しあててみないと聞こえないけどね
心臓は胸の中でたしかに力強く動いているんだよ


差し伸べられた手の温もりを知らない人が
その手を冷たく振りほどいたとして
それこそが世界の抱える病気のようなものだから
無条件で愛することを止めてはいけない

この世界に生まれたことが罪だというなら
躓きながら藻掻きながら生きることがきっと罰だと思うんだ
苦しみ耐えぬいたやりきれない日々だって
輝いて見える瞬間が訪れるかもしれないから

この世界に生まれたことが罪だというなら
躓きながら藻掻きながら生きることがきっと罰だと思うんだ
汚れたこの手でも誰かが必要としてくれるのならば
それこそが僕の償いなんだと思うんだ


自由詩 罪と罰 Copyright 1486 106 2009-07-04 00:11:11
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