初夏 そのようにとらえられない
水町綜助

 白色の波形を目でなぞった
うねりは遠く
目を凝らすほど直線的に
街の始まりで折り込まれ
目には見えないまま続いていった
そんなように思う

ひとみに映らないものを見ること
地下鉄の座席で
眠気に溶けて目をつむるが
前に立つ男がMBAについて
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午後に
森の入り口で
取り急ぎ
人物を想定し
すがたはなく
永遠に一分後に、かつて存在した
今はこうして存在しない

深緑だ
深緑が折り重なる

とても触れていられないふくらみをつくる森の前で
影を前髪の下に張り付けて立っている
まだ流れない汗だけが
川の底のように速く
靴の中でぬれた親指の動きを見ている

僕の影は小石を深く隠していく

  *

スーパーマーケットで恋に落ちるように
春をやり過ごし
瓶詰めのピクルスを食べる
もはや形無しな皮をプツンと歯で破き
酸味は舌ではなくて脳にやってくる
あいさつはない


自由詩 初夏 そのようにとらえられない Copyright 水町綜助 2009-04-16 08:36:27
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