シンメトリー
千月 話子

湖に風は無く 輝いて水鏡

シンメトリーなあなたなら
真ん中まで歩いて行けますよ
と 遠く凪が囁いた

波紋 足跡 とろんとろんと表面張力
怖くなって涙を流すなら
左右対称にお願いしますね

左涙は独裁者の夢の跡 穴の開いた地図と沈没
右涙の言霊語り 思い浮かべて水の泡

世界の楽天家が 中心で
ふわふわ 浮かびながら
青空の入道雲を ただただ眺めているので
雨はまだずっと遠くで 止んでいるのだろうか?

湖に水面は無く
湖は 青空を映す青空になったので
それなら 鳥になれぬものかと
鳥のように 羽ばたいてみせた

空想が翼を作る 左目は嘘つきだと言う
左足に重力は無いのに 理性が水に沈む

それでも僕は 向こう岸の君に会いたかったから
時間短縮に失敗してしまった バランスの悪い掌に
静かに息を吹きかけながら 真っ直ぐに進んで行くよ

連絡無しに 出会った僕を見て
君は 泣くのかな?笑うのかな?

湖の最終地点にて
波紋など もう怖くない
君の手と僕の手が重なって 対になっていくから・・・

遠い雨が やって来て
幸福のスカラベ(黄金虫)で凪を磨く
上下左右の水鏡 渡るなら今
 君の許へ・・・・・・・
 


自由詩 シンメトリー Copyright 千月 話子 2004-08-21 23:52:37
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