彼女が望んだように
佐々宝砂

手伝ってあげたのはわたし
猿ぐつわをはめて
両手を後ろに縛りあげて
うきうきと心弾ませて飛び込む
井戸のくらがり

よい井戸姫になるのだよ
井戸の底は竜宮に
天に通じるのだからね
よい井戸姫になるのは
簡単なことではないよ
努力するのだよ

白い肌はあおぐろい鱗に変わるだろう
みどりの黒髪は藻に覆われて本当に緑になるだろう
でも愛らしい人魚になってはいけない
井戸姫になるのだから
爪を研いでおきなさい
うつろな牙には毒を満たしておきなさい

無論ヒトの心などとっとと消しておくこと
これは必須事項

さてそれではわたしも井戸の底へ
あなたもご一緒にいかが?




自由詩 彼女が望んだように Copyright 佐々宝砂 2004-08-21 04:15:23
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