1974年のオートバイ
水町綜助

金色の銀杏の葉が
車道の上で
巻き上げられて
流れて
はしる
オートバイの
吹きすぎる
排気に
何か書き込むなら
こんにちはと
さようなら
なんて
テキトーに
誰も聞いちゃない
秋が綺麗に吹きすぎて
町にやたらと金色が増えて
きょん2の木枯らしに抱かれてなんてインストで鼻歌って
何をこんなにも思い出しているんだろう
太陽の金色には
思い出すことが多すぎるらしい
総天然色だったり
水彩だったり
絵筆をそろえても
うまく塗れない
あとからすこし
色味を加えて
首を傾げる

走り抜ける大通りで
街路樹の落ち葉の中を
ストップモーションのガラス片みたいに
チリチリとひらめいて落ちる中を
抜けて
あちこち当たって
こんな形をしてるらしい
何を思っているのか
透明なもので
それだけがわかればさしあたり


停止した中野の外れで     落ち葉があちこちに当たって
町の上を白っぽい鳥が
二十羽くらい群れて飛んでいる
うねりながら旋回し続けて   とりあえずもういい
時計を回している
何のためにそうしているのかは
僕にはちっともわからない


自由詩 1974年のオートバイ Copyright 水町綜助 2008-12-02 10:56:27
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