8月の遺伝子
千月 話子
揺れる陽炎に 渇水し干からびたミミズの死体は
祈るように折れて アスファルトの道なりに続いている
あと数メートル先に 花咲き誇る 土の庭があるというのに
透き通る炎の中で 養分さえ焼き尽くされて 消えていくのか
散水機は清々しく水を携え 惜しみなく世界を潤す
風よ 乾いた体を軽々と 宙に飛ばせ
渦巻いてバラバラになる欠片に 少しの水とレクイエムを
遺伝子は探し続ける 粉々の粒子に成り果てても
遺伝子は自覚する 湿った土の匂いを
8月に来たる悲しみと 永遠に続く思い出に
涙は溢れ 涸れることは 無い
零れ落ちる塩の水が 帰るべき場所に辿り着く頃
全ての魂が 静かな夜の天蓋でベールを纏い
送り出される純白の 祖となる 記憶を持って眠る
抗おうとも 関せずとも
覚えているのは 染みた 配列
8月の遺伝子 遠い情景 、、、、、
自由詩
8月の遺伝子
Copyright
千月 話子
2004-08-06 17:32:48