しまい忘れた風鈴
木屋 亞万

鉄器風鈴の舌が鳴く
舌先に垂れる短冊
声量のある長く響く歌声
一匹はある夏風の布が
短冊を揺らすように
ゆっくりと流れ行く

風鈴は夏風が
めくる手紙にはさむ
しおりみたいなもので
夏風を受けた時だけ
鈴の舌先、恍惚風鈴
風の流れに風流を見る

しかし夏は去り
秋風、台風の強まると
風は布から刃に変わる
短冊の朝顔くるくる回り
薄紫、淡桃、黄緑、水色
刃に混じり合う色と悲鳴

冬風の部下、下卑た足軽が
しまい忘れた風鈴の短冊
朝顔を刈り取っていく
風の刃をにぎりしめ
窓から窓へ徘徊していく

冬を越えることができず
舌を切られた風鈴は
夏が来てももう鳴きはしない
足軽風の終わった先に
山のような短冊


自由詩 しまい忘れた風鈴 Copyright 木屋 亞万 2008-09-20 14:14:24
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