Venom
木屋 亞万

すべて投げ捨てられるのは今のうちだぜ

自分の凶器が尻を裂いて現れそうになる

殺したいやつの一人や二人、誰にでもいるもんだろ
あの黒い瞳に一発お見舞いしてやろう
偉そうに俺の分身を殺していきやがったあいつ

気配を感じるだけでせり出してくる殺意

刺せ、急所を、捨て身で行けば怖いもんなしだ
独り身だろ、嫁も子もいない
お前が死んで悲しむやつがいたとして
死んで困るやつぁいない

このままやつが痛みなく飄々と生きていけるなんて
耐えられないだろ、あいつはストレス解消みたいに
俺を、いや俺の分身を殺しやがったんだ
命ってのは大事なもんだというやつもいるが
命が消えるのは一瞬、だが、殺したやつはずっと生きる
悪でさえ命を平等に持っているからいけないんだ

怒りに呑まれる、良心は排泄された

一度思い切り刺して、殺さず
ズキズキする痛みに苦悶の表情を浮かべさせ
回復するまで放置して、痛みが喉元を去り
完治の希望が見えかけたときに一瞬で殺す
恐らく自分も死ぬことになる
殺しは諸刃の剣、すべて投げ捨てる覚悟を持て

針はもう尻先で痙攣している

毒を持つものは、毒に誑かされて死ぬ
蜂のように刺せ、己が蜂であるならば


自由詩 Venom Copyright 木屋 亞万 2008-09-23 02:35:09
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