朝、目覚めると妻がいなかった
身重で明後日には出産する予定だった
大きなお腹が隣から消えた
「好きだよ」と言うと「当たり前」と答える
あの妻がいない

ふらりと朝の公園へ出向く
鳩が悲し ....
すべて投げ捨てられるのは今のうちだぜ

{引用=自分の凶器が尻を裂いて現れそうになる}
殺したいやつの一人や二人、誰にでもいるもんだろ
あの黒い瞳に一発お見舞いしてやろう
偉そうに俺の分身を ....
鉄器風鈴の舌が鳴く
舌先に垂れる短冊
声量のある長く響く歌声
一匹はある夏風の布が
短冊を揺らすように
ゆっくりと流れ行く

風鈴は夏風が
めくる手紙にはさむ
しおりみたいなもので
 ....
まだ少し暑さが残るので
冷房のスイッチを入れる
と、角が取れた熱は
あっさりと部屋を去り
すぐに肌寒くなる

ひと夏の情熱が
夕日のごとく悶えながら
大地へと沈んでいく
ヤカンがゴツ ....
朝焼けは夕焼けに似ている
赤ん坊と老人が似ているように
どちらも生命の底力に満ちている
朝の6時半に店のシャッターを開け
芋粥を作る母さんの割烹着
糠床を掻き交ぜ茄子を一本取り出し
畑の歪 ....
子どもが衰えてきた
ゲームに依存し自宅の中に引きこもる
学校にも遊びにも行きたがらない
無気力で社会性の乏しい子どもが増えた
キレる子ども、暴れる子ども
モラルハザードバイオハザードウォータ ....
コップに耳をあててごらん
サイダーの歌声が聞こえてくるでしょう
宝石の鋭角が弾ける音
磨かれていく耳、頬、瞳

夏と炭酸は相性がいいから
海も花火も西瓜も朝顔も夕立も
炭酸と共存していて ....
愛を口からしか伝えられない男を可哀相に思う
女はじっと見つめるだけで相手をその気にさせるのに

朝起きたならインスタントコーヒーを掻き混ぜるスプーンの音
おはようという言葉が静かな猛毒のように ....
石ころ転がる山道の上
船を担いで登りゆく男前
船頭が多くいた訳ではない
ただ山を登るべき船だった

夏はいつでも暑いものだが
太陽弱まる黄昏のなか
通り雨の走り去るひと時が
大地を労り ....
お願いしなくても
地球は回ってくれていて
お願いなどしなくとも
太陽と月は巡回してくれる
わざわざ願わなくても
両親は私を産んでくれた
そして願ってもいないのに
心臓は今日も動き続けてい ....
黒い雲です空一面
私は黒い傘を持って
駅まで旦那を向かえに行きます
雨が降るだろうと思っていました


天気予報で小娘、憂鬱な芝居をしながら
急な雨にご注意くださいと言いましたから
人 ....
詩人は手で話す
読者は詩に目を傾ける

手で話し、目で聞く人と
生活の中で出会う

詩人の口も手も
まったく役に立たない

話す手は空中を泳ぎ、踊る
表現の塊だった

手話は発 ....
 男はイヴを堪らなく愛していた。人類最初の女性に清純の輝きを見ていたのだろう。だが、イヴに近付きたいと日々願い続ける彼の願いが叶うことはなかった。自分がアダムであったなら、どれだけ幸福だったことだろう .... 世界を感じる旅に出た知己から、手紙が届いた。
写真が一枚同封されていて、白い息を吐く馬と白眉を垂らして笑う彼がいた。
手紙の文末には「君が好きそうな響きを見つけたので、一緒におくります」と書かれて ....
病気ってさ
痛くてさ辛くてさ
周りに迷惑かけてさ
色んなもん失ってさ
未来の終わりが見えてさ
過去が虚しくてさ
死にたくない
って思ってさ

元気な頃はさ
死ぬなら泡のようにさ
 ....
真夜中の公園
テニスボールで
手遊びしながら
魂の友と話す
吸い込む息だけが
あまりに冷たいので
骨がひやりとする

電灯が月より明るく
ブランコを照らし
静かなので
女の声は ....
駐車場にちゃぶ台があって
さも当然のことのように
家族がそれを囲んでいる
夕飯
一家団欒
座布団もない
ただ、ちゃぶ台だけ


楽しそうな会話
夕日が横顔を照らす
ひじきの煮物
 ....
古きを懐かしみ
新しきを刷り込まれる
現実の延長線上に
レトロな未来はnaive

アトムは漫画の中で
人間らしくnarcissism
ドラえもんはTVの中で
声変わりをsymphon ....
胡瓜がある
美しい弧
青々とした肌
適度な間隔を開け
並ぶ突起

私の若い頃には
胡瓜は地を這い
地と接する腹は白かった
緑と白、間に黄色
あの化粧っ気のない胡瓜
最近見なくなっ ....
疲れ果てた大地に雨が降った
染み込んでいく一粒ひとつぶが
次第に流れを作りはじめて
大地の顔をぐしゃむじゃにしてしまう
泣いているのか死んでいるのか
わからないような崩れ具合で
少し不安に ....
夜に拾った球を舐めてはいけない
わかっていたはずなのだ
私は舐めてしまった
砂利道の中に落ちていた
黒い小さなビー玉

始めは頬がシリシリと痺れ
舌は硝子の冷たさと甘味
腐った葡萄か苺 ....
朝も
沸く客席
青空はまだ
夏の子供
踊る応援
内野も外野も
黙ってはいない
魔物が潜む宝石に
青年は魅了され
汗を惜しまず
走り回る
太陽と砂の中
活躍する
大きな革の手袋 ....
石をもらった
偏平な石だ
大切にしなさいと言われ
私は闇にある箱の中へ
しまっておいた

自分でも指の感覚でしか
わからないその箱は
誰もたどり着けない
闇に眠る宝箱だった

石 ....
彼女はシャワーを浴びながら歌を唄う
水の流れに乗せて悲しい歌詞を
まるで日曜の午後のようなのどかな声で
でもどこか切実に聞こえてしまう
すごく心地よいのだけれど
 ジーンズはベランダにぶら下 ....
耳で煙草を吸う女がいた
うなじに口がある女は知っているが
耳で息をしている女は初めてだ
しかし同時に二本の煙草を
両耳で吸うというのは面白い
耳から吐き出される煙は
機関車人間の玩具のよう ....
今日は始めてのインターネット
僕は少し舞い上がっていた
期待と不安のなかでパソコンが
回転音とともに起動していく

マウスを上手く操れるだろうか
兄の話では乗り回すのに
時間がかかる生き ....
のどの乾く夕ぐれ
雲があかいのは
燃えているからか
くろい腹の雨雲が
こげた水を降らす

声が出ない火傷
つめたい水が喉の
痺れをあらい流す
希望がむなしい
なまぬるい雨と
煙り ....
少女は紙を丁寧に折り
いびつな筒を作りあげた
彼女はそれを器だと言う
満足げに頷いて
人差し指に口づけた

指で器の底を擦っては
また人差し指に接吻
水が漏れないように
続いてゆくた ....
膝に水をためた
母は手術で水を
抜いてもらった

肺に水をためた
父も手術で水を
抜いてもらった

誰にでも
水がたまる
時がある

人は誰もが
抜いてしまいたい
水を持っ ....
旅に出るとき、私は
体温を消そうとする
体温計を握りしめて
血と水銀を反応させ
ぬかりなく冷却する



観光に行くのではない
旅に出るのだよ、私は
見られるためのものを
見たく ....
木屋 亞万(531)
タイトル カテゴリ Point 日付
毛を舐める猫自由詩5*08/9/24 0:50
Venom自由詩008/9/23 2:35
しまい忘れた風鈴自由詩2*08/9/20 14:14
夕日夕食自由詩1*08/9/18 0:26
芋粥自由詩4+*08/9/16 16:58
酒臭い産声自由詩1*08/9/15 2:28
微炭酸自由詩2*08/9/14 0:54
ぺぺ[group]自由詩0+*08/9/12 2:22
遡航[group]自由詩1*08/9/11 17:56
生き道自由詩3*08/9/8 1:19
夕焼けヒッチハイク[group]自由詩3*08/9/4 0:10
手生自由詩3*08/9/3 0:36
林檎愛好散文(批評 ...1*08/9/2 1:58
カランダッシュと電波自由詩8*08/8/31 0:22
遂逸、確固は雷自由詩3*08/8/30 1:46
未来がまだ懐かしかった頃自由詩3*08/8/27 0:21
青空家族自由詩5*08/8/26 1:12
レトロつみ自由詩1*08/8/25 0:59
胡瓜と木瓜自由詩2*08/8/24 0:21
野球[group]自由詩1*08/8/23 0:04
夜球自由詩5*08/8/21 3:22
金剛石(ダイヤモンド)自由詩008/8/17 1:23
宝石自由詩1*08/8/16 1:36
暮らすように歌う自由詩2*08/8/12 23:09
耳煙草自由詩2*08/8/10 3:41
(←写真クリックで拡大)自由詩5*08/8/9 0:42
水のうえの夜[group]自由詩1*08/8/7 0:58
夜のための水自由詩3*08/8/6 0:28
水のための夜自由詩4*08/8/5 0:29
無温旅程自由詩1*08/8/3 20:24

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