夜火
鎖骨




今夜は涼やかになめらかな夜
でも私は燃えさかるものを見たくて
強い酒を二瓶あおってあとは行き場のない妄想力を
総動員すれば少しの間火が吐き放題になるんじゃないかと思い立ち
すぐさまに実行したんだけど
私の想像力は毛ほどもなかったってことを再確認するだけに終わって
そういえば私何かが強く大きく焼けるのを近くで見たことがない
沸かしすぎた浴槽に満ちた水分子の純真に尻を火傷したことはあっても
火中で燃えたことがない
私の想像力がひどくちっぽけだったために
涼やかになめらかであったこの夜は世の人を悩ます無駄毛の足元にも
及ばない無為な夜になった




自由詩 夜火 Copyright 鎖骨 2008-09-16 01:56:36
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