生き道
木屋 亞万

お願いしなくても
地球は回ってくれていて
お願いなどしなくとも
太陽と月は巡回してくれる
わざわざ願わなくても
両親は私を産んでくれた
そして願ってもいないのに
心臓は今日も動き続けていて
誰かがお願いしているからか
詩は今も右胸から溢れてくる


心臓と詩臓がぱくぱく
弾んで止まることがない
吸った空の気から肺臓は
酸素を取り出して
詩臓は言葉を取り出す
身体を巡った言葉が
口から指から吐き出され
誰かの酸素、誰かの言葉が
私の口元を通り掛かる

(どうぞ寄っていって下さい。たいしたものはありませんが)

太陽の熱気や月の冷気
植物の喜びや動物の悲しみ
を、肝臓と感情に蓄え
必要に応じて取り出していく

(人々が以前よりも感動を求めるようになったのは
感情の機能が昨日より低下しているからかもしれない)


私がお願いしなくても
万事がうまく流れてしまうので
肝心なことほど気付かない
一人で生きてきたような
虚栄心に浸っているから
感情が昨日よりも
機能しなくなっていく

(いつかはお願いしても何もしてもらえない日が来るかもしれないから)
感謝を忘れぬよう、くれぐれも忘れぬよう

誰かのおかげで生きている
でも生きているのは私
自分のやりたいようにやる
自分自身を離さない、忘れない


そうだ
私は
お願いされなくても
誰かを助ける人になろう

頼まれなくとも
希望に満ちた詩を書こう
同じだけの絶望を添えて



自由詩 生き道 Copyright 木屋 亞万 2008-09-08 01:19:15
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