薄晴れる二月に
縞田みやぎ

おだやかに今日も晴れて
廊下を しん と
わたしたちの影がのびていきます

手首を引かれて あなたは
すこし
つまさきで歩いていました
わたしはあなたよりもずいぶん せいが高いから
おいつくのに何歩もかからない
つながれない もう片方の手
からっぽのだらり を
わたしのところに欲しくって
わたしもすこし 腰をかがめました

こどもたち
ねえ手のひら

欲しくって
もらえると思っていたのです

手首はきっと あなたではなく
ゆびのさき つめの
くだらなく下を向いて
あなたは つまさきで歩いている

ひもでくくれたら わたしたちは
きっと 引いて歩くのでしょう
わたしたちの手は
きっと
あなたのこと 足も 手も
待ちくたびれていられない から
だから あなたにゆるされたいと思うことも
そんなには ありません
あなたの手首をつりさげて
きっと 引いて歩くのでしょう

ふと合わせた わたしの手のひらから
あなたは するりと手を抜いた
もういちどのばしたわたし を うつむいて
あなたはしずかに 振り払う

ねえ こどもたち
わたし
わたしは
なんと
せいの高い生き物だったのでしょう

引かれていくあなたは また
もう片方の手をだらりと からっぽにして
すこし つまさきで
わたしの前を歩いていく

ねえ こどもたち
おだやかに今日も晴れて
あなたのつまさきのあたりに
のびて わたしの影があります


自由詩 薄晴れる二月に Copyright 縞田みやぎ 2008-03-12 00:58:09
notebook Home 戻る  過去 未来
この文書は以下の文書グループに登録されています。
がっこう