したく
縞田みやぎ

ざんばり ざんばりと いぬがないている

雪の準備をする
まんなかには空洞があるので
けもののようにすると よくひびく
肺のふをたいこにするのは
ああ 森の?
こぶしが地面についているやつだ
大きな葉ばかり わさりわさりしている
でもここには 雪が降るんだ

ほう ほう ほう
そちらも冬ではないんですか
くにの名前って かたかなとかんじばかりだ
ほう ほう

ぜんたいお寒いからね
土のなかが じっとするので
靴のうらも じっとするので
歩く音が かりかり 上をすべるね
いつもよりも 上のほうになら
高く飛べるように思って

ベゴニアが 半分こおってとけてをくりかえすと
三日目の朝にはすっかり半透明だった
とろんとしたあの生き死にが わたしは好きだよ
実際 抜いてほかすのはパンジーのため
連中の葉は こおらないのですって
園芸のせんせいが言う
春にはきれいになりますよう て
手指にベゴニアのくずれた葉が はじから はじから ついて

件のくにの名前を知らない

ざんばり ざんばり
いっときくらいは遠くまで行けようか
ここはもうしばらく しんとするよ
のどのおくまで凍らせよう いぬいぬ
遠く
あの遠くには おおきないきものがいるよ

わたしの肺は ほう ほう と
けもののいきをもらすよ


自由詩 したく Copyright 縞田みやぎ 2008-03-02 01:23:20
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