だからキスしようよ
マッドビースト


 久しぶりの電話や会話で
 「なんか」という接頭辞だけを繰返して
 うまく喋れない

 話しがしたいのに
 言葉を紡ぐことが出来ない自分が
 もどかしくって涙ぐんでしまう
 
 僕の心はポンコツです
 気持ちは高圧電流みたいに溢れてしまって
 出口を探して僕の中を駆け回っています
 言葉を制御できない
 時代遅れのCPUです

 筋肉の繊維の中をズタズタにして
 回路が熱くなって
 切なくて目元が熱くなって
 僕はまた涙ぐんでしまって

 もう少しゆっくり話していいですか?
 もう一度 今度はうまく話すから
 もう少し付き合ってくれますか?


 伝えたい気持ちは
 色や形ばかり変えて僕の視界を掠めていって
 名前は教えてくれない
 僕は
 「なんか」
 を繰返してどうにか呼び止めようとしてみるけど
 言葉なんて役立たずだ
 僕は役立たずだ

 気持ちを伝えたいのに
 お願いです 電話を切らないで
 お願いです まだここにいて もう少し

 役立たずを言葉に押し付けて
 壁に叩きつけてみるけれど
 次の瞬間には僕の口から別のが生まれてしまうから

 いっそこのままキスしようよ
 そうすれば言葉は出ない
 唇から伝わる暖かさが
 もっと雄弁に僕等の気持ちを伝えるから
 
 言葉なんて役立たずだ
 僕は役立たずだ

 だからキスしようよ


自由詩 だからキスしようよ Copyright マッドビースト 2003-09-05 00:50:20
notebook Home 戻る  過去 未来