それはあしおとを鳴らして
ねろ

鼠が足音消して眠りだす頃
内緒話は夜から始まる
昼から逃げた月がおびえている
おびき寄せられた踵と爪先は
捕まえられた唇のふるえる音を
聞いている

両目の瞬きをする瞬間に
広がり始めた血がかすんで
青くなってゆくのを見てはじめて
いかれたのだと気付く
真冬はもう通りすぎたよ
蛇口から落ちる水の冷たさを
うれしく思う日にやってくる

真っ赤なメリークリスマス

真っ赤なメリークリスマス

雪の溶けた跡の街は
灰色に深呼吸して君の
足音を待っている
空気を模写する男の子
が地面を這いずり回って
だんだんと温まりながら
黒いコートからよだれを
たらしたりしているのを見ていた


その子は生まれてからまだ
15年しか経っていないという

いちにちを半分しか齧っていなかった頃に
よくやってきてはそう言った
小箱のような部屋から聞こえる音が
少し悲しいとも言っていた
肌に降る夜の音がするときには
黙って掌を握ったままポケットにつっこむ

鋏が夜から追いかけてきて
空から月をきりとっていく
最後に描いた歪んだ椅子の絵を
何日も眺めて過ごしていたんだ

僕ら2人でいっしょに歩ている時
冬のそれを寒さだと感じる
のはやめてみたり

僕らの描いた絵が大きくなったり
小さくなったりして最後にはどうしょうも
なくかすんでしまったり

僕らすねたりしていつも音楽の
歌詞ばかりを追いかけて生きる
事を忘れてみたり

そういうのが似合ってる時もあるよ

真っ赤なメリークリスマス君という僕!

血を吐き出しながら祝って
この日に生まれた全員の子
を数えて待ってる

僕は現存出来ないかわりに
上着の内側に君をに隠して歩く
君が教えてくれたいくつもの
言葉を歯の隙間で発音しながら

いつだって操られながら
いつだって愛想笑いを繰り返しながら
いつだって木の根元をかじりながら
いつだって歯茎が舌にあたるのを気にしながら

ぬれたピンクとブルーの言い訳に
僕らはクローゼットに詰め込まれる
その中では血の流れる音が聞こえて
呼吸する仕組み自体が壊れてゆくのを感じたり

揺れてくまぶたが8時を示す頃
チシャ猫に噛まれた跡を気にしながら
僕は紅茶を飲んでまだ待っている


未詩・独白 それはあしおとを鳴らして Copyright ねろ 2007-03-29 19:00:28
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