退化する雨
ねろ

視線の低い僕に繋がれた
のんびり足先まで溶け出す夕暮れと
女の子の目は右に左にゆれだすのが
振り子みたいだと僕は思ったり
たとえばあの踏切の手前に出来ていた
水溜りが死刑囚をモチーフにした絵に
似ていたりすることが好きだ

南極でゆれている弦が回転していくスピードは
はしりさっていくこのへやの密封された空間の隙間
ただだらしなく歩くのをやめて、やめて、って小さな子が
脇をとおりすぎていくのに似ていて弧になってオレンジを
吐き出しおいかける

昼間の螺旋を追いかけること
雨の日にじわり、と血の匂いがすること

地面にはいちめんの音、音、赤い音
がしている

消えていくのは白と灰色の流線型の扉

僕が選んだこの手の先 

僕が盗んだこの手の先

何かあるけどどうにもならない中で

歩いてくこの掌と一緒に

はろう、はろう、とあいさつする語源は
水の中で関節ににて消えていく
シナモンの匂いがまだのこっていて僕は
なんだかとてもかゆい

ひとあし跳びで飛んでゆく女の子と
あしたの宿題は雨の降り出すときの感じ方と
地面がぬれてくじんわりした空気感の違い

浮かぶ、浮かぶおかしいものはおかしくもない程眠い
あるいはこの匂いと水曜日がぬれてゆくのを見ていた 

銀色のねずみが耳に菊の花をさしこんで黙ったまま
その目は紅茶の底の暗く濁ったところに似ているよ

こめかみひらいて目で見て足で触れる
木で出来た床の匂いとキでから始まる音の中身

つよく、つよく、こめかみの青

つよく、つよく、こめかみの青

ふわりふわり浮かぶ青と緑のかたちについて
浮かびながら足跡つづく心の裏側と

深緑の音とラヴ

駆ける女の子がへたくそに並べる木の玩具
あっちにいったりこっちにいったりしたりして机から
がらがら落ちてゆく時の音の造形

たとえばそんなもの探す事とか雨の日の匂いに
隠れたのは小指との約束でもあること

ずっと前からたずねてきていたよ明日の指を数えて
ひろってもひろってもたらないんだっておやゆびが言う

暮れかけた日曜日と新しく生まれ変わることばと
こばこ ここのか

もうずっと今日は雨について考えていたいんだ





未詩・独白 退化する雨 Copyright ねろ 2007-03-28 11:43:22
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