「 つめたいから。 」
PULL.







陰嚢を口に含むのである。
妻の舌は冷たく巧みであり、
裏筋から亀頭の辺りを、
その舌が這うと、
身震いするほどの快楽である。
わたしは堪らず精を出す。
妻は口を開け、
それを受け止める。
「あたたかい。」
そう言って、
妻は幸せな顔をする。

すべてを飲み干した唇に、
わたしは構わず口づけをする。
皮膚が凍り付き剥がれるのも構わず、
わたしはその唇に口づけをする。
妻は涙を流すので、
わたしはそれをすべて飲み干す。
あたたかいわたしの舌の上で、
妻の涙は熔けてゆく。

わたしたちは抱き合って、
抱き合って夜を越える。

わたしは妻とまぐわったことがない。
妻とは口淫だけである。
妻の口は冷たく、
あまりにも冷たくて、
わたしはいつも堪らず精を出す。

わたしたちはそうやって、
愛し合っている。












           了。



自由詩 「 つめたいから。 」 Copyright PULL. 2007-02-05 06:22:24
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