空の骨
クローバー




腕章をつけた腕で
その児童会役員は、挨拶運動をしていた
少年は、中心的人物で
1組の代表だったが
実はこの学校には、まだ1年半しか通っていない
(しかし、当然6年生ではある)




変則的な授業が増えた
社会と理科と道徳と算数を一緒にやるために
彼ら6年生は、クラスを入れ替えていた
隣の家の少女は
友人に、彼がそうなの?と少年を指差して言われ
赤面し
ただの幼馴染だよ。と答えた。

幼馴染なんていない。と少年は思った。




少年は、図鑑を両脚の間に広げて、床に座っていた
ティラノサウルス、プテラノドン、ブラキオサウルス、ステゴサウルス、・・・。
恐竜たちは、どこに来ても、少年の味方だった
そして、みんな、仲良しだった。

ティラノサウルスは、肉食だからって、みんなを襲ったりしないし
ブラキオサウルスがどんなに大きくても、ステゴサウルスを無視したりはしなかった。
少年は、特に、プテラノドンの背中に乗って、シュルルル、ズバン!
と、海に潜るのが大好きだった。




カラスが死んでいた。
畑を荒らすカラスたちに、見せしめになるように
電柱に、死骸が、結びつけられていた。
カラスなのに、所々、白かった。

少年は、カラスも化石になりかけているんだ、と思った
だから、電柱カラスとも、友達になれる気がした。




自転車のリムが歪んでいた
漕ぐたびに、フレームにタイヤが擦れて
キュルキュルいった
鳴くようになったとワクワクして立ち乗り。

凹んでいたのはカゴも同じだった。

クラスメイトたちが、休み時間にこっそり蹴りを入れていた
なんて、考えもせずに。




教室で給食を食べたかった
少年は
教室で給食を食べられなくなった

教室で給食を食べていた
少女は
少年がカレー好きかどうかを考えていた




大きな翼、まるで、コウモリのような質感で描かれた骨の翼
崖に巣をつくり、他の種とは、住む場所が違う少年は
カラスと一緒に帰りたかった。

ただ、もう、帰ってきていた
ここが彼の家になっていた、彼の知らぬ間に。




プテラノドンの骨はもう、スカスカの空っぽで
羽ばたくたびに、痛みで落ちそうだった。

だけど、少年は、一日も学校を休まなかったし
電柱カラスは、逃げもせず、日に日に、白くなっていった。




ジャングルジムを取り囲んだクラスメイトたちは
何故か、少年を中に追い込み、責めた。

少年は考えた。たぶん、代表にしておいて
先生に好かれてしまった自分のことが
嫌いになってしまったのだと考えた、だが、そんなことは今更どうでもよかった。

残された何も知らない所のみんなの代表は、ジャングルジムの中
小さな声で
「カァ」
鳴いた。

太古の骨に守られた、カラスの子だった。



10
放課後、学校へ遊びに来た少女はそんなことを知らないで
ジャングルジムの中に蹲ったままの少年に、かりんとうを、くれた。
そして「みんな待っているから、またね」と、困惑の表情で去っていった。

かりんとうは、変な形だったけれど
少年の友達によく似ていた。








未詩・独白 空の骨 Copyright クローバー 2004-04-10 20:13:52
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