空の骨
クローバー
1
腕章をつけた腕で
その児童会役員は、挨拶運動をしていた
少年は、中心的人物で
1組の代表だったが
実はこの学校には、まだ1年半しか通っていない
(しかし、当然6年生ではある)
2
変則的な授業が増えた
社会と理科と道徳と算数を一緒にやるために
彼ら6年生は、クラスを入れ替えていた
隣の家の少女は
友人に、彼がそうなの?と少年を指差して言われ
赤面し
ただの幼馴染だよ。と答えた。
幼馴染なんていない。と少年は思った。
3
少年は、図鑑を両脚の間に広げて、床に座っていた
ティラノサウルス、プテラノドン、ブラキオサウルス、ステゴサウルス、・・・。
恐竜たちは、どこに来ても、少年の味方だった
そして、みんな、仲良しだった。
ティラノサウルスは、肉食だからって、みんなを襲ったりしないし
ブラキオサウルスがどんなに大きくても、ステゴサウルスを無視したりはしなかった。
少年は、特に、プテラノドンの背中に乗って、シュルルル、ズバン!
と、海に潜るのが大好きだった。
4
カラスが死んでいた。
畑を荒らすカラスたちに、見せしめになるように
電柱に、死骸が、結びつけられていた。
カラスなのに、所々、白かった。
少年は、カラスも化石になりかけているんだ、と思った
だから、電柱カラスとも、友達になれる気がした。
5
自転車のリムが歪んでいた
漕ぐたびに、フレームにタイヤが擦れて
キュルキュルいった
鳴くようになったとワクワクして立ち乗り。
凹んでいたのはカゴも同じだった。
クラスメイトたちが、休み時間にこっそり蹴りを入れていた
なんて、考えもせずに。
6
教室で給食を食べたかった
少年は
教室で給食を食べられなくなった
教室で給食を食べていた
少女は
少年がカレー好きかどうかを考えていた
7
大きな翼、まるで、コウモリのような質感で描かれた骨の翼
崖に巣をつくり、他の種とは、住む場所が違う少年は
カラスと一緒に帰りたかった。
ただ、もう、帰ってきていた
ここが彼の家になっていた、彼の知らぬ間に。
8
プテラノドンの骨はもう、スカスカの空っぽで
羽ばたくたびに、痛みで落ちそうだった。
だけど、少年は、一日も学校を休まなかったし
電柱カラスは、逃げもせず、日に日に、白くなっていった。
9
ジャングルジムを取り囲んだクラスメイトたちは
何故か、少年を中に追い込み、責めた。
少年は考えた。たぶん、代表にしておいて
先生に好かれてしまった自分のことが
嫌いになってしまったのだと考えた、だが、そんなことは今更どうでもよかった。
残された何も知らない所のみんなの代表は、ジャングルジムの中
小さな声で
「カァ」
鳴いた。
太古の骨に守られた、カラスの子だった。
10
放課後、学校へ遊びに来た少女はそんなことを知らないで
ジャングルジムの中に蹲ったままの少年に、かりんとうを、くれた。
そして「みんな待っているから、またね」と、困惑の表情で去っていった。
かりんとうは、変な形だったけれど
少年の友達によく似ていた。
未詩・独白
空の骨
Copyright
クローバー
2004-04-10 20:13:52