思い出
クローバー
1
明後日の雲を見ながら
今日、雨が降らなければいいね、と
僕らは、手をつないでいたりして
傘を探そうともせずに
願ってばかりいたから
僕ら、から、ら、が逃げ出して
僕は、雨が降ることなんて信じていなかったんだ
2
蝶番や、合体ロボットの関節や、配線や、の仕組みはよく知っていた
おもちゃ箱の中には、みんなと同じものばかりが入っていた
仕組みを理解したくて分解したわけではないのに。
けれど、みんなと違うものは、何も持ってなかった
それだけが気に食わなくて、僕ら、特別でありたかったから
分解して、新しく組み立てようとして、壊れた
3
言葉が、書店に転がっていたから
拾ってポケットに入れた、間接的に言葉を万引きしてしまった
でも、家に帰るまでに
ポケットの中から、デミアンは印を持って卵の殻から飛んでしまったし
リルケはもう消えてしまっていたし
サリンジャーは、バナナしか残してくれなかった
後味が、うっすら、舌先で渋い、バナナの皮みたいなバナナで
僕は、書店に謝りに行けなかった
4
今日は花見だ
夜桜だ
幻想的なんて、陳腐な言葉になってしまった
水鏡に映る桜がライトアップされて、花びらが空に昇っていくから
地面の桜は、それに合わせて、水面に花びらを落としていた
アルコールを飲んでいた僕は、逆立ちして
映った桜の枝を折りに
飛び込んでしまいたかった
5
誕生日は4月で、産まれたときは3月です
「学年が違えば、あいつには、会わずにすんだのです」
と、講義したくなった汚い子供は、ブリキ缶の中で、裸足でいます
溶接してしてください、出てこないように
だって、もう、あれは、親の愛なのだと知っている
6
依存していたのだから
僕は次に、書店で、活字を飲み込んだ
すごい速さで飲み込んだ
体の中のアルコールを薄めるために
あいつと、明後日を、流してしまうために
僕ら、から、ら、が無くなったことを思い出さない雨に
ぁぁ、僕は、また一つ言葉を忘れてしまった
何か、とても、うまい言葉が、ここにあったはずなのに
と、いつも思いながら
今日もまた、何かを組み立てている。
未詩・独白
思い出
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クローバー
2004-04-07 02:05:37