思い出
クローバー



明後日の雲を見ながら
今日、雨が降らなければいいね、と
僕らは、手をつないでいたりして
傘を探そうともせずに
願ってばかりいたから
僕ら、から、ら、が逃げ出して
僕は、雨が降ることなんて信じていなかったんだ


蝶番や、合体ロボットの関節や、配線や、の仕組みはよく知っていた
おもちゃ箱の中には、みんなと同じものばかりが入っていた
仕組みを理解したくて分解したわけではないのに。
けれど、みんなと違うものは、何も持ってなかった
それだけが気に食わなくて、僕ら、特別でありたかったから
分解して、新しく組み立てようとして、壊れた


言葉が、書店に転がっていたから
拾ってポケットに入れた、間接的に言葉を万引きしてしまった
でも、家に帰るまでに
ポケットの中から、デミアンは印を持って卵の殻から飛んでしまったし
リルケはもう消えてしまっていたし
サリンジャーは、バナナしか残してくれなかった
後味が、うっすら、舌先で渋い、バナナの皮みたいなバナナで
僕は、書店に謝りに行けなかった


今日は花見だ
夜桜だ
幻想的なんて、陳腐な言葉になってしまった
水鏡に映る桜がライトアップされて、花びらが空に昇っていくから
地面の桜は、それに合わせて、水面に花びらを落としていた
アルコールを飲んでいた僕は、逆立ちして
映った桜の枝を折りに
飛び込んでしまいたかった


誕生日は4月で、産まれたときは3月です
「学年が違えば、あいつには、会わずにすんだのです」
と、講義したくなった汚い子供は、ブリキ缶の中で、裸足でいます
溶接してしてください、出てこないように
だって、もう、あれは、親の愛なのだと知っている


依存していたのだから
僕は次に、書店で、活字を飲み込んだ
すごい速さで飲み込んだ
体の中のアルコールを薄めるために
あいつと、明後日を、流してしまうために
僕ら、から、ら、が無くなったことを思い出さない雨に
ぁぁ、僕は、また一つ言葉を忘れてしまった
何か、とても、うまい言葉が、ここにあったはずなのに
と、いつも思いながら
今日もまた、何かを組み立てている。




未詩・独白 思い出 Copyright クローバー 2004-04-07 02:05:37
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