「リバーズ・エッジ」
大覚アキラ

どうでもいいような昔のことを
おおげさに懐かしがったり
にぎやかに笑いあったりしながら
おれたちは川べりの細い道を
ただぶらぶらと歩いていた
真冬の太陽は
弱々しいけれどやさしく
そして一点の陰りもなく
おれたちの肩に降り注いでいて
それがなんだか無性に悲しかった

おれたちには行くあてもなく
そして帰る場所もない
それは
家族がいるとか
仕事があるとか
家があるとか
そういうこととは別の次元の話で
だからおれたちは
命がけの明るさを装って
昔のことを話すことでしか
自分を確認できないんだ
だっておれたちは
そういうやり方しか
教えてもらわなかったから
そうでもしないと
怖くてやりきれないんだ

やがて
「そういえばあの頃は」
という語り出しで始まる話が
底をついてしまって
おれたちは無口になって
鼻をすすりながら
日の傾いた川べりの細い道を
俯いて歩いていた
たいして寒くもないのに
鳥肌がたって仕方がなかった


自由詩 「リバーズ・エッジ」 Copyright 大覚アキラ 2007-01-31 16:23:23
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