告げる雨
虹村 凌

外は春を告げる雨が降り出したので
虫屋さんで雨宿りをした
煙草の煙はたちまちに水の向こうへ消えてった
虫屋さんは黙って雨粒を数えていた

外は夏を告げる雨が降り出したので
どの部のかわからないロッカールームで過ごした
少し微笑んだ後に座り込んで
今まで何人傷付けたか数えた

外は秋を告げる雨が降り出したので
薄暗い喫茶店で雨宿りをした
煙草は天上を黄色く染めて散っていった
マスターは黙って珈琲豆を挽いていた

外は冬を告げる雨が降り出したので
家の中に引き返して雨が止むのを待った
音を消したテレビが何かのニュースを伝えている
女の子の髪にキスをするのが好きだ

外は季節を告げる雨が降って
いつも部屋で一人ぼっちだった
誰かが泣いて雨がふって
会う日は何時も雨だった


自由詩 告げる雨 Copyright 虹村 凌 2007-01-15 10:03:26
notebook Home 戻る  過去 未来