すべてのおすすめ
母は人間で父は鬼だった
私と兄は半分ずつの鬼だった
理由もなく殺され
重ねて竹林に埋められた
だからあの子は竹から生まれた
あの子は人間だった
兄を吸い取り鬼となった私は
....
夏
白い夏
思い出の夏
反射光
コンクリート
クラブ
ボックス
きみは バレーボール部だった
きみは輝いて
目にまぶしかった
並んで
腰かけた ぼく
ぼくは 柔道部だった
ぼ ....
ほうれん草の種は小さい
ニラの種は薄くてぺらぺら
菜の花の種は小さくてまるい
アボカドの種の大きさはご存知ですね
今にも飛んでゆきそうな
ふわふわした綿毛の種を買ってきて
プランターに ....
新しい下着
新しい靴を履いて行ったあなたは
もう
この家に戻る気はない
蝉の脱け殻のように
全てを脱いで
新しい身体に生まれ変わって
生きて行く
生まれつき聾唖を背負った
人生は地獄だと
一本の大きな釘が私の胸めがけて突き刺してきた
その日から私は
果てしない透明の中に自分を失いそうになりながら
無音を指揮する能力を身につけようとして ....
この町のどこか
古いアパートの
薄暗い部屋の片隅にひとり
力なくうずくまっている
私を見つけたら
無駄な足掻きでもよくやったなと
労ってあげてください
あるいは
都会の真ん中で、大 ....
まあるい串団子をほおばって、
まあるくなる、
きみの顔もまた、
まあるいお団子、
夜、徹夜で迷路した。白い目でやってるよ。
よるてつやでめいろした しろいめでやってるよ
人が苦手で、捨ててカニが飛び。
ひとがにがてで すててかにがとび
寝て。真昼の何かに、カ ....
明るい空はとても気持ちよく
心は晴れ
今日も かわいい蛇がにょろにょろ
中庭の土の上 たわむれています
そこに さんっ と太陽が照っています
あぁ なんてのどかな ....
あなたは静かに家をつくりはじめる
静かに 何年もかけて
あまりにも美しくそれは成されたので
家ではなく 森や 額縁や ひとかたまりの風に見えた
静かに何年も何年も
何年も何年 ....
球
球と私
私は球の上に乗っている
球は宙に浮いている
浮いてぐるぐる回っている
回りながら周回している
私の顔の周りを
うるさくってしようがない
私の乗った球が私の顔の周りを回っ ....
誰のことも好きじゃなかった
ずっと誰のことも好きじゃなかった
自分のことはすこし、好きだった
みんな、この世の人はみんな2人になって
愛しあうのがいいんだって
い ....
わたしはとびうおだったので
まばたきもしなければ
泣きもしないし
空腹のために蹲ったりもしない
愛のために飛んだりしない
跳ねて すべりおちる
生きることだけをする
そして ぜったい ....
去年の年末に
急に
母がご飯を食べられなくなった
入院して退院してご飯だけは食べられるようになった
みんなに迷惑をかけたくないからと自然に弱って死ぬのを決めた日に父にすき焼きを作っても ....
わたし、夏のある日、グラウンド、土の中、埋まってた
その日、ミサイル、飛んだから、サイレン、ずっと鳴ってた
教室の、クラインの壺、餌やり当番、死んじゃった
秘密だよって、嘘つき、 ....
あなたの言うあなたが誰なのかわたしは知らないし
押し入れは騒がしい
新しい殺虫剤を買い
特に何もせず昼を夜にする
手を汚したくなかった
「手を汚したくなかった」
まあそうだよね
....
ぬかの手入れをし朝食を作りながら考える
誰もこんな風にはできないのだと
PCに更新をかけながら考える
誰もこんな風にはできないのだと
生活が複雑になりすぎた
多く一般人が置いてけぼり ....
完成した一日を私は見たことがない。
それを欲求するにつけ気持ち悪くなる。
どこまでつづくのか、この毛細血管内…
急性期、慢性期とは違う
退院前提の患者達に対して
病院が新たに取り組み
出来上がった開放病棟
十代のシンナー少年から
族上がりのチンピラヤクザ
アル中やヤク中やテキヤや
トラック運転 ....
ばらばらと歩いていると
ばらばら
というこの擬態語は
この場合使えるのかどうか
複数ではなかったが
(そのつもりだったが)
個人的にある程度ばらばらと
歩いているつもりだったが
....
川辺で凹んだサッカーボールを見つけた
泥に汚れていたので 水際で洗った
すると驚くほどつやつやと輝きだした
それは幼い頃に亡くした僕のボールだった
日に当てて乾かすと次第にへこみが膨らんで ....
昼間、干しておいた敷き布団
どこか小麦の香りかな
ひとまず、嗅ぐ
犬になる
犬になっている暇はない
はやく眠らねば
眠らねば、ならぬのに
やはり小麦の香り ....
冷蔵庫のなかに
あなたがいる
夕べの寝顔そのままに
たまに取り出し
話しをしよう
言えなかった
ひとことも
....
ことばは、はっした時点で幻になる。
よくも悪くも。
ね、みみをもつってそういうことだよ。
幻のみみは幻を受けとれる。
昔、にんげんのみみがとても好きな王様がいて、
その王様は ....
傷のない明日の西陽を
寒くない風も 一緒に
蚊に刺されながら吸った ベランダで
脳みそをごまかしてる意味という意味を
取り出して木彫りにした
明日の夜見る夢に三色ペンも
蝉に鳴かれながら拾 ....
立ちはだかっている
それに触れることはできる
じゃまになって先へすすめない
それが何なのかはわからない
それを拳でたたいてみる
身体を打ちつけてみる
痛みを感じる
が それは何も感じてい ....
落ちていく無数の窓
そのうちの 二つの窓が
一瞬だけ重なりあう
すこし驚いて
少し笑って また離れる
ただ それだけ
足が寒くて目が覚めた。寝ているうちに片足が布団から出てしまったらしい。なにか不安な夢から抜け切れないで枕元の明かりで足を見てみると、透き通った白魚が腿のあたりまでびっしりと食いついている。食いついたき ....
母の手は魔法使いのように
何でもできた
欲しいものを
何でも作ってくれた
「母の手の中の林檎が
うさぎになってゆく」
いつも傍で見ていた
幼いわたしを思い出した、朝
針女について語らなければならないだろうか。そんなことができるわけがない。私が言えるのは彼女の舌、真っ青なその上に無数の針が針山のように刺さっていることだけであって、他の何一つも許されてはいない。自分で ....
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