カンカン照りの夏の日に
黒いペンキが捲れてた
露出した鉄の赤錆を
ぼんやり見つめる
ころがり落ちた
階段の下から
目覚ましが
遠く鳴る
リリリ
リン
リ
すでに
取り返しが ....
あぁ 声を出せば 空に溶け
取り戻す術を 僕は知らない
芝生に寝転び 眠ろうが 嘆こうが
空の青が 濁る事はなく ついつい安心してしまう
大きな葉の表に そんな一遍の詩を 書き記してお ....
雨、いつも待っている、
雨、いつまでも人を殺せない、
雨、いつか風邪を引いた私の、
雨、手の届かない、ところが常に、痒い、
痒い、痒いんだ、前歯の裏あたりが、前頭葉の祖語が、
優しかった祖母 ....
肉屋の軒先で 雨宿りしながら
ぼくはグラム398円の値のついた
ショーケースの中の
肉の切れ端を見ていた
タバコに火をつけた
ヘンドリックが
食肉になって
....
父の衣服が
風も無いのに揺れだした。
一人でうずくまる東京のアパートで。
死の間際
僅かな体力と精神力を右手に込めて
「お父ちゃん。お父ちゃん。」と呼ぶ娘たちの両手を
ほんの少しず ....
紙の実が地に落ち
音にまみれる
土ぼこり
鳥の声
水の庭
鳴りつづける標
海へ 海へ
蒼は岩をすぎる
百合の耳の子
息つく間もなく染まる羽
何も ....
死ぬ。
という言葉は重たいので書きたくない
書いているのは
そろそろ自由にしてあげたいから
それほどに今は
定義することに困惑している
うつ病の母が書をしたためている
私が幼い頃 ....
太陽があらゆる方位に光線を放つ様を真似て
家中の家具を森に散在させていく
(僕らが親の不在を問わなくなったのはいつ頃からだろう
草がこれ以上伸びられないという高度を確かめる僕らは
木が ....
いくたびかそのセーターは洗われて等しく縮みつつ仔へ還る
特別な季節であったのだ少女らは毛糸の虜になって
編み物をしている時間というものは、傍から見ていればただ退屈な時間であるかも ....
翼をください
卒業式に歌ったね
せんせい
こないだ雪がふった日に
ぼくのオカメインコが死んだんだ
ぼくの手のひらで
羽をいっぱいにひろげて
それっきり
飛びたかったのかな
も ....
父の祭壇の後ろに回りこみ
白い布の結び目をほどき
小さなロケットの中に1・2本の欠片を入れた。
「ごめんなさい。ごめんなさい。お父さんごめんなさい。」
近くに居て欲しいと願い
いたず ....
言われたことがありますか
空気の読めないヤツ と
大抵の人は
そんなことを空気の読めないヤツに
言ってもムダだと思っているから
君も誰かに直接
言われたことは
ないんじゃない
....
「ハイジのおでこはアールデコ」
塾に行く子供たち 電車を待ち
丸い おせなで ゲームする
一番線に 白ヤギが紛れ込んでいますご注意ください
満員電車の中で みんな気付きません
二番線に ....
何をしても悲しい
悲しすぎて何も手につかない
俺はろくでなし
悲しむために目を覚まし
悲しみながらパンを食べ
枕を濡らして寝てしまう
いつのまにか
一匹の犬になっている
明後日の方角に ....
一日中、眠りに落ちていた。目が覚めると、身体の疲れはいくらかマシになっていた。しかし、それでも動き出すことはできそうになかった。あらゆるすべてのことが、どうしようもなくつらく思えて、仕方なかった ....
手をつないでいたことを
忘れていた
君のほうからほどいてく
そんな
当たり前なことに気付かぬまま
いつのまに
手をつないでいたことを忘れてしまった
手を
つなぐこと ....
独り 楽しむ と記し
独楽(コマ) と読む
独り楽しむためには
独りで己を支えなければならない
独りで支えるためには
日々 回り続けなければならない
そして回り続けるためには
己 ....
正義と正義のせ
めぎ合い 置き
去りにされる血
と涙 見え透い
た手口のイカサ
マ 手札は不条
理のフルハウス
パンドラの箱の
隅を 爪楊枝で
つついているの
は いったい誰
....
耳で辿る
穂に隠された洞の入口
別れのような仕草が灯る
風を迎える羽も一緒に
重さも無く
積もる連なり
こぼすことなく
こぼれるあかり
浪の指揮者が浪に ....
とりどりの人がいる
顔、瞳、髪の色はもちろん
おそらくは心の中や
境遇までも
透明の涙が私を取り巻く重いものを流してくれる日もある
透明の涙が
さらに粘度を増して醜いゼリイになって ....
青い扉の向こうに
雪原が広がっている
かすかなノイズ
そのなかに紛れるように
一頭の白い馬
あれはあなたが放した淋しい夢だ
指で触れて
夢だと知りながら
その長い首を抱きしめる ....
リンゴを木の枝にうまく乗せることができない
その人は寒空に部屋着のまま 油断したのだ
やっと乗せ終えたところを見計らって挨拶すれば
かじかんだ「コンニチワ」と鼻水少々 そそくさと家の ....
みどりを選ぶつもりが赤い服を着ている
たいていは朝がくるまで眠りにつけず
日を高くしてまぶたが垂れる
走ってゆくつもりが
いまだにはだしを気にしてかくれている
さまざまのいきぐるしさ ....
漢字の書き取りをしながら息子が大粒のなみだをぽろぽろとこぼしている
耳という字を書いていた
どうしたんだ?と聞いたが俺には言わないらしい
その後スマブラをしたんだけど俺の勝ちがちょっと続いたら
....
バースディケーキの上は綺麗に飾られた素敵な世界。いつもはジミィな醤油色に彩られたばあちゃんの食卓が、がぜん夢見がちな乙女色になるから不思議。白いくりいむからは甘い香りがしてきて、苺はまるでお姫様みたい ....
握られ
ねじられた硝子の器から
水があふれつづけていた
指のかたちの溝を
無音が浸していた
樹の傍らに立つ鏡
どちらにも在るもの
片方にしかないもの
片方から片 ....
猫砂に埋もれた二人の思い出は
一部は綺麗に乾涸らびて
形だけくっきりと存在している
一部は砂がかけられずに
異臭を発して、未だ砂の上の鎮座する。
軋む心と身体を引き摺って
ほん ....
あなたは笑っているのか
どこにいてもわかるお日様の声
私たちの心臓は揺れていて
駆けつけたい気持ちではちきれそう
あなたの詩は泣いていて
文字をなぞれば指が濡れ
ゆき場の無い塩水が光っ ....
私が不治といわれる病気になった時
学校のことや
子供会のことなんか
代わって引き受けてくれたママ友に
「いろいろごめんね」と謝ったら
事情を知っている彼女は言った
「そんなこと、気にし ....
その場から逃亡したくなる衝動を
退去だけを渇望する怨念を
それを
いまだ感じ得ぬ喜びもつかの間
汚れてしまう
汚れてしまったら、
清めて流す
気高さを取り戻すため、清め
新しき膜を ....
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