真夜中に破水する
完結しなかった気分
ディスプレイの明かりだけが
生き残った部屋の中で、ああ…
生活の残像
こびりついた窓
送信済みのメールと
届かなか ....
ひとつの泡
ひとつの滴
止むことのない曲線に降る
すべての冬
宙を羽織り
気を被り
星の履きもの
季節の嘘
森を作る鳥
岩へ至る岩の径
鉱の曇 鉱の ....
冬の朝のフローリングは
薄い氷が張っている
朝一番に起きて
冷たい氷を踏むのは私の役目
ぱりんぱりんと音をたてて割り
かまどに火を入れ朝食を作る
陽が昇り
村人たちが起きる頃
....
語れば語るほど
あなたへの思いが
色あせ
別物になってゆく
何か言おうと戸惑うたび
ワインの酸味がきつくなる
ことばになること
ならないこと
しなくても ....
君の、夜明けの口唇に
葡萄の粒を含ませる朝
旅立つための翼をいだく
わたしの翼は白いだろうか
それとも燃えて血がにじんで赤く
葡萄の房に朝の雫がこぼれ
風が喜びを歌うとき
....
もういちど ちゃんと 笑って
アップルパイの焼ける 甘い匂い
おおめにふるったシナモン
ふれていたいのは 痛いとこ
こねていたいたいのは やわらかなとこ
アップルバイが焼ける匂 ....
ライトブルー ソーダーシュワ
真冬のアイスクリーム
そんな匂いが弾けるシュワ
着込んだ湯気が凍てつく氷張りの澄んだ鏡空へ
何気ない息を膨らますシュワ
星に雪がかかる降 ....
雨の日は床の油と土とが湿気に混ざって独特の匂いがする
信号待ちの小学校の前でそんな事を思い出し
雨だ
僕は歩くのが下手で
いつも靴がずくずくで
傘はその意味を放棄している
風が
....
ウォーターベッドに溺れていて、誰もたすけてくれやしないよ。
深夜まで待っていたのはいいけれど、
ここは永遠だったから、誰にも見つけられなかった。
揺さぶられて
あくる日、偽物の ....
束ねられたさびしさを解くと
ふっと花の香りがしたようで
そのことを伝えようと振り返り
不在に胸を踏みつけにされるようだ
音も声も湿度もすべて気配の中にないまぜ
微笑も寝顔も怒ったときも輪 ....
歪んだ
時空の
軸受の
軋む音を
聞きながら
夜毎
もう 使わなくなった
言葉を
燃やす。
文学、音楽、哲学、映画、絵、写真、を捨てる。
孤独を愛する事、をやめる。
夜にだけやさしく在ろうとしない。
男を殺さず、女を犯さず、夜盗を働かない。
夢の意味に絶望しない。
昼間 ....
日常を窒息させ、見知らぬ恋人にキスをする。
・・ ・
痛覚の一部分でしか無いのに、それを愛だと言う。
・・ ・
蚯蚓腫れした睡眠欲を、粉々に ....
髪と髪の狭間に青く
釉薬を塗り重ねたような闇
古寂びた寺院の奥に
水を湛えた器
紙と紙の狭間に深く
ひらいた掌のような蓮
連理呼吸さえ白く凍る
夜の淵で濁っては落ちる
夢より覚 ....
目の前にまっさらな木の板がある。
ペンを持つ手があらわれ
中心に名前を書いていった
それは一つの遠い約束。
生まれるよりずっと昔から
何者かに記されていた
あなたの名前 ....
「月光魚」
木の若芽
鳥と木と宇宙を愛しながら
魚のように生きるのもいいな
ああ
今夜月の光をあびたい
月明りの森を泳ぐ魚になって
....
夜の道を
あの人のような街灯を
見ていた
白線の
ぼやけた先の終着駅へ
白い獣が
のそのそ
歩いてゆく
光が途切れるとき
黒い獣に襲われて
あのブチは
シロからクロへ変わった ....
月は夜の命醒めた情熱が空に浮かんでいる
張り出した枝の先に引っかかってなにを思う
そらが墜ちてくるまであそぼうか
朝のひかりを待たずに逝ってしまう
幾千のしじまの響きをたずさえて
....
瞳が見ていた
僕は知らないふりをした
頭の中へ届かないように努力をした
だけど上手くいかなかった
思い出した途端に
黒曜石の帰り道だ
恐ろしいほど星が綺麗だ
恐ろしいほど無数の小さな ....
耳鳴りが止まない 夕立が止まない 誰も気に病まない
いくつもの六角形めがけて降りてくる無数の線
歩道橋では今日も神様が飛び降り自殺をしようとしている
マンホールは踊り出しボートが通りを行き交って ....
サンズイに雨、
雨がふると
淋しくなります
しとしと言う雨も
ざあざあ言う雨も
ぽつぽつ言う雨も
どんな雨だって
淋しくなります
地面の下に埋めた
あなたの骨は
永久に芽を ....
寝息を立てる背中に心の中で呼びかける
世にも優しい人
ベニヤ板で塞がれた窓に蒼い月の光を描こう
今は夜中、外は涼しいはず
都会も眠り、時の歩みも止まったよう
月光と小さな鉢植が要る(習慣化の ....
かつて
のしかかる羽根だったもの
いつも
ふゆの景色に茜色を刷いていく
かろうじて開かれた膝のおく
凍える火を吸う唇がいう
「わたしたちは箱から飛びだした角のようなもの
いつだっ ....
「森を求め」
木の若芽
街を行きつ戻りつ
毎日歩いているにつれ
ここがうっそうとした森に見えることが
ふと 起こるようになった
ビルの壁の連続は
薄暗くしめっ ....
積乱雲が雨を降らせる。
空が好きだな。雲が好きだな。それを映す
水面が好きだな。言い出したら霧を見つけた。靄も好きだ。
雲の根源は地上に流れる水にある。
葉の裏から出た水蒸気にある。
空が私 ....
あしたの朝
夢を拾おう
ほんとうの空気を
呼吸できるように
息をしてる間に
きのうまでに見た
悲しい夢さえ
昇華されるように
時計のベルが鳴り
次第に目覚めゆく
駅へと ....
きみは愛しい
そのきみに
あなたを認めると
一層愛しくなる
それはきみなのか
あなたなのか
***
数少ない出会い
別れ
いつかは来る孤独
一瞬でも
一緒 ....
噴水の枯れた公園の溝で交換している。へばりついたしじまで億劫になっていく。
チョコの食べ過ぎで、覚えたての関係代名詞をすれ違いざまに渡されて。
誰もいなくても跳ねたがるバスケット・ボール
....
さんざん笑ったあとで
壁はつめたく白く
空はかたむいて灰色だ
さんざん笑ったあとで
どこへも行かれずに
手をのばしては
見知らぬ肌をさがしている
方向性を定めず水面を揺らす少年少女
アイデンティティーの火花が空をのぼっていくから
頬杖ついた透明な空虚
あくびをしながら眺めればいい
空はなにひとつ言葉をもたない
殴り書きの小 ....
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