このごろは誰も彼もが
この不完全な世界に嫌気がさして
あるいはまだかいだことのない素敵な匂いや
見たことのない景色
ダーウィン・フィンチ
新しいリズム 韻律をさがして
親しい友にさえいつ ....
久しぶりにその眼に出逢ったのは
スーパーへ出かけビニール袋を両手に下げて帰ろうとしていたときだった
歩道の隅で停まったままの車椅子に乗っているひとがいた
その老いたひととぼくの眼が遇った
....
月が私を見てる
あなたが月を見てる
私はあなたを見てる
奇妙な三角関係
猫が横切る
白いソファーに寝転んで、
あくび
静か過ぎる
日付が変わるま ....
詩にならない言葉ならべてインクのな
くなったボールペンに私は告白したの
です。今までありがとうずっと好きで
した。ボールペンは息をひきとり今は
コンパスの隣りで眠っています。退屈
していた言 ....
昨日のうえにことりと
今日が落ちてくる
その順番は変えられない
やっと捜し当てた今日は
つかのまのあいさつを済ますと
足早に去ってゆく
きのうの昨日のきのう
そこには取り ....
少女、
月曜日の放課後につくった詩が
火曜日の朝には消えていた
細い指でなぞった物語が
校舎裏で砕けていた中2の夏
西の空がまぶしい
あれは現代詩ですか
いいえ、
夕暮れです
毎日す ....
かなしさは夜のなかにある。
体育の時間、ぼくはだれともペアをつくれ
ずに、みんなが踊るフォークダンスを眺めて
いた。それは濁った河を渡る水牛を眺めるの
....
芯まで凍えちまうと
....
海から遠い場所で
服についた砂をはらう
風にのってかえる砂は海へ
夏の夕方は
暑さの残り香がぺらりとおちて
いっぽ いっぽ秋にむかう
後ろ姿のこどもは
あなたかもしれない
....
夜中に
なき声が聞こえた気がして
目が覚めた
流れ星がいま落ちた
祈りの声が
夏の夜の
そこかしこから
聞こえた気がした
君に会ってから空が青い
黄昏の街を駆けて行く影法師
眩暈にも似た既視感に
いつまでも立ち竦んでいた
きっと夜はまだ遠い
*
退屈な雨の午後
迷宮のような街を眺めていた
陰鬱な気持ちを弄ぶように
霧雨が ....
ぽたぽたと流れた
今までのこと
なにも生まないからだ
光合成の邪魔をして
見映えと少しの知識を
着て食べてすり減らす
また月が欠けてゆく
だれかのせいにして
今日も言い訳をする
部屋 ....
雨が硝子を 舐めるので
時間すら 舐めまわすので
歩くことの意味や 進むことの意味も舐めるので
この世界には もう 紫陽花しかありません
飴細工のように 雨に舐められて
窓の向こう ....
──わしが死んでも
この時計は捨てんでくれよ
親父はよくそう言っていた
死んでから
それがたったひとつの
遺言らしきものだったと思い当たる
祖父がやっていた
はんこ屋の店先に ....
不思議なんて忘れていた頃 ときどき肩をたたかれる 遊ぼうよ あの頃のように
あんたはどうせ枠にはまれないさ だったらいっそ逸脱の限り 尽くしてみたらいかが?
なにも担保にならない 自分さえも ....
昨日が終わり
君はパイプオルガンの鍵盤のように
その時代を弾いてるんだね
でもさ
四角いプールが水をこぼすほどの
雨が降らない
だから、あたし聴いてるよ
カート・コバーンみたいに打ち抜け ....
幼い頃から海が大好きだった。
道産子なので北の大地も僕の遊び場だったが函館という港街に長く住んだ。
洋風の風が吹くこの街で潮の香りが好きだった。
朝市のような活気に満ちあふれた世界はとても心 ....
わたしはわたしの中に
夜を溜める
そしてその夜を醸してゆく
深くなるように
やわらかくなるように
わたしはわたしの身体に
花を鳥を
風を月を沁みこませる
わたしの中の夜が
やさし ....
電話を切って鞄にしまう。空がけぶっている。触って舐めて愛したせいで欠損した展望の死骸である。ここにあるどの不足が、あなたをして涙ぐましい暴力を振るわせしむのか。水に潜ってまで夢を見ようとは思わない、と ....
月よ
もう光をこぼして泣くことはやめて
あなたの心は虫が知る
コオロギが慕ってしきりに鳴く
月よ
女の顔で笑ってるね
そんなさみしい表情では
一億年もあっという間
月よ
多くの悲しみ ....
道を歩いていて
右隣のひとも
左隣のひとも
前も後ろも
みんながいっせいに駆け出したら
わたしもまた、わけもわからず、走り出すのだろうか
行き先もしらず、目的もしらず
押し流され、ばたば ....
「砂浜に抜ける路地」を一つ拾ってきて、波の音
を額縁に飾る。愛という言葉で何を隠したいのか。
行間には関係性だけがあって鞄には入らない。み
んな事情を抱えていて、 ....
{引用=
緑をゆらす
風は、なおらかに こんなにも
美しいものだから
少しばかり
すずろ歩き
季節をむさぼれば
不埒な 出会いが待っている
ちいさな 会釈
往 ....
マーケットで二個入りケーキがセール
さらにそこから五十円引き
たぶん賞味期限のせいだろう
とレジに持って行くために手に取ってみた
あまりの軽さに食欲はどこかへ
売り場に戻してこれは、と考 ....
絵筆に水をあたえているあいだに
なに色を使おうとしたのか
もうわからなくなっていました
あれから
もうずっと水で描いています
びしょびしょの画用紙が
いつまでもしぶとく破れない
....
生まれ年のワインが不味い
生きるって何だと聞かれたら
僕ならこう答える
春が来るまで待ち続ける事だと
まっさらな善意もときには
誰かを傷つける
精一杯の思いだったけれど
未熟さや迂闊さの先走りだったのか
考えて、考えて、
次はもっと 上手にできるように
一週間まえのこの午後を想う
気がくるいそうになって辺りを見回す
きらめいているゆれている
あの光あの風
泣きそうになる
胸の空洞がぼんやり
ほんとは死んでしまうくら ....
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