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誰かとこすれあってできてしまった命が
夕方のチャイムと一緒に甕から飛び出た
「あずきとぎ」のささいなミスからこうなった
最初から判っていたことなんて大したことないね、っていう
軽率な発言が玄関 ....
とうといのです
ぽかぽか日和だねえ、と
ぱたんぱたんと洗濯物を干し
ついでによいしょ と
お布団をはこぶ
あのとき
わたしにお布団は大きすぎたのです
お母さんの大きな手で
運ばれて ....
たった一言交わして
すれ違うだけの人にも
私を憶えていてほしい
それは贅沢なことだろうか
食卓や墓地や廃屋にさえ
いつも人の面影があった
私の生まれは人だから
....
混ざり合った夏と秋
蝉の声は草の裏
公園に砂場
さらさらに乾いて
吹き飛ぶ
子供の目線
詰まっている
遊
風化もしない
流れもしない
とどまった
ままで
混ざり合っている今 ....
泣き虫だったあの子は今どうしているだろう
と
眠いだけの午後の中で
当てはまるように浮かんでくる
絡まりそうな思考を
かき分けるように居座る
昔、記憶
ひとつ
指切りで交換した約束 ....
太陽はどこまでも沈みようがないので
椅子と同化して溶けていきそうな
右足のつま先の前にレールを跨いだカメラ
回る車輪と一緒に垣根を飛び越えていく犬を追う
信号のある十字路はいつで ....
遊星の昇る日
空の縁
半円を描いたら
落ちていく
時々振り返ってみたり、見上げてみたり
大通りの騒音がすっかり馴染んでしまったせいか
空の動きのほんの少しなら、気にならなくなってい ....
9月11日
学校帰りの地下鉄はいつも
ぎゅうぎゅうでみんな疲れてて きらいだ
でもそれが今日は少しやわらかな
そう、土曜日
休日の人もいるのだ
休日の人も
真実子ちゃん
こ ....
虹の下をくぐり抜けてしまったよ
いま
気がついたんだ
願い事が叶っていたことに
ありがとう
願い事が叶ったら
それでお終いじゃないんだね
だって
いまは虹の向こう側
色の ....
頭痛は冷やせば治るって
あんたに吹き込まれて
だから18℃
流れようのない最低さ
あたしはこの冷えた部屋に
背中をあずけ、とぎすまされてる
首筋を神様がぐりぐりしてる
万力魔神って、 ....
それは私ではない誰か
窓際の花瓶の水を
新しく換えるのは
いつも気付かぬうちに
橙色の陽が差しこむ
開け放たれた窓から
手を振って身を乗り出す
あれは私ではない誰か
肌 ....
絶えず不自然なコイルのように
終始が連結されている紫煙は母乳から吹き出している
おばあちゃんの皮膚のような
破裂したビーチボールは
闇のなか微かに縁取られガサガサと呻いている
夜中海 ....
臍のうえ
私の中に虫がいて
ごろりと寝ころぶ
指のさき
ちくちくしている
虫がとれない
もう、何年も前から
飼い慣らしながら歩いてきた
死にぞこないの虫を
でもいつからか
私が ....
それを
望んでいると
思ったばかりの
ところに
球状の
破裂しそうな
言い訳が降りてくる
透明な空には透明な線がある
らしいけど
雲に紛れて今日も見えない
東経139度北緯35 ....
名前を叫んでください
教室の窓際
規則正しいリズムを奏でる
僕のシャープペンに向かって
名前を叫んでください
グラウンドを
誰よりも速く駆ける
僕の靴音に向かって
名前を叫んで ....
散歩の途中で
くしゃみをすると
塀の向こうから犬に見つめられて、困った
立ち止まって見つめ合ってみるけれど
悪いことをした
わけではなく
少しだけ難しいことを
難しく考えてしまうから ....
流れ込むように
止まれない足元は
回転する音を
通り過ぎた重みを含ませながら
響かせている
夏に
焼ける
アスファルトが靴底を溶かしている
積みあがる積木の街
冷めないままで
....
卵を産もうとするシャケは身が白くなる。
まずまず白くなっても味は変わらないと思
うのだが、それでも紅いほうが美味しそう
に見えると、おじさんは卵を取り去った腹
に紅麹をなぶりつけて、 ....
「なかみはなにでできているの?」
幼い子が私に聞く
着ぐるみに入っている私は
その問いに答える事は出来ない
おしゃべり厳禁とアルバイト規約にあったから
「あなたのなかみはなにでで ....
逡巡
ほんの少しの間隔で
手をつなぐ
手をつなぐ
街の角での深呼吸
こんなに苦い空気でも
こころは深く平らになる
よく晴れた日
取り残された月を見つけて
一秒
一秒を
見 ....
ぼんやりとした広い場所のあちこちに
色 数 かたちを変えながら
光が点滅しつづけていて
指先にしか届かないくらいの
かすかな熱を放っている
捕らえようとひらかれた
片 ....
どうしようかと
暮れている一日
些細な段差に躓いてみたり
心の縁を爪弾いてみたり
火の上で
ゆれるやかんに
お日様が降りていく
じゅっと
音を立てて
沈んで落ちていく
....
あばら骨を浮き立たせたまま
空はどこへ埋まろうとするのか
墓地の土は硬すぎるのに
操車場の跡は狭すぎるのに
まわりながら燃えあがるかたちを
位置も時間も持たないものが
....
点と線と千
繋がらない夜があって
道に迷っては
迷いっぱなしになる
街灯は
月明かりに似せようと
目には見えない点滅を繰り返すけど
足元を照らすには
まだ足りない
らしい
....
コーヒーカップに水を少々
砂糖のないテーブルの腕が
彼の足をつかんで引きずって放さないままでいるので
ぼくは少しだけ安堵します
コーヒーカップに水を少々
窓の外には目のない彼女
旅を続 ....
湾岸道路を東京方面へ
助手席にへたり込むわたしと
渋滞に巻き込まれ不機嫌なあなたと
つまんないラジオ聞きながら
めんどくさいから話しかけない
または
全然関係ないことばかり言う
どう ....
──ちょうど躓いた小石の先に連なった足が
氷柱を踏んで動かされていくようだった──
映像はいつもコマ割の上で音をあてていく
それは今日の病室でも変わらないまま
カーテンの外 ....
雨降りの校庭には
死んだ生徒の霊が出るから
連れて行かれないように
傘は深く差して
声を出してはいけない
理科室の前の廊下は
いつにも増して薄暗く
硝子棚の奥で
骨になった ....
午前三時五十五分-
知らない女の子が ボクの手相をみてる
ぼくは、蛇ににらまれた蛇の手下のようにどきどきしてる-
小学生のころに京都で、知らない町を自転車で探検してて
角まがったらいき ....
青い糸は政府専用の糸だから切ってしまう
そんなこと言ったって
道路は糸電話の糸であふれかえっているし
不自然な形で投網まで紛れ込んでいるからな
こんな偽装はもうたくさんだ、腹立たしい
と言っ ....
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