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真夜中の解放区にたどりついて
心はこわばっていた輪郭をほどいてゆく
すると時空はみるみる遊色化し
心の奥に隠れていたいちばん柔らかい部分と
とめどなく融け合うのだ
やがて眠りがお ....
北
極星のもとに彼は立つ
視界に都市と荒野を広げて
その指先から綴られゆく言葉に
閃く叡智の稲光
西
葡萄色の雲を漂わす
美しい黄昏の瞳
彼は歌う 深々 ....
曲芸師は球形の虚無で玉乗りをする
奇術師はハットから鳩形の虚無を取りだす
春になるとあらわれる
円い緑の丘がある
その丘はいつも
すこし遠くにあらわれる
だからそのてっぺんに吹く風を
わたしは知らない
その丘の上の空は
昔に書いた詩たちが
掠れて消え ....
君は踊る
薔薇を 菫を 雛菊を踊る
揚羽蝶を踊る
木洩れ日を 気ままな風を踊る
君は踊る
虹を 青ざめた夜明けを 葡萄色の黄昏を踊る
波を 湧きあがる雲を 嵐を踊る
君は踊る
....
君の生まれた十月の国で
うたうように眠りたい
銀木犀のしずかなかおりが
漂う夜気に包まれて
丘を木立をぬって流れる
川のせせらぎを聞きながら
幼い君が 少年の君が
夢 ....
夏の
薄明と
薄暮とが
震わす弦
此の世と
彼の世との
あわいに張られた
世界の果てに 椅子を二つ置いて
暮れつづける夕暮れと
明けつづける夜明けとのあいだで
いつまでも 話をしていよう
かたちのない宝石を
手のひらで転がす九月の午後
孔雀たちはまどろんでいる
淡く実る葡萄の夢を見ながら
青ざめた薔薇の横貌
月を相手にパントマイムするアルルカン
時計塔の溜息
幾重にも自己複製する記憶
仄昏いカルテ
見えない翼の天使
森の浮遊
虚空を音もなく走る硝子の列車
白い小鳥が描か ....