方位座標系
塔野夏子

    北

極星のもとに彼は立つ
視界に都市と荒野を広げて
その指先から綴られゆく言葉に
閃く叡智の稲光


    西

葡萄色の雲を漂わす
美しい黄昏の瞳
彼は歌う 深々と薫る旋律
魔法のようにゆらめきひるがえるその声


    南

彼の微笑は
陽光と化し 水面と化し 微風と化し……
幾重にも綾なす戯曲を
やわらかく 時にふいに鋭く 演じながら


    東

蒼白い曙光を浴びて
みずみずしい若枝の肢体で
くるめき舞う彼 歓びと 戦きとを
きらきらとたなびかす 憧れにまかせて






自由詩 方位座標系 Copyright 塔野夏子 2015-12-29 21:12:53
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