すべてのおすすめ
小野道風は 
柳に何度も飛びつく蛙を見て
一念発起したという
  そのとき 蛙が 
  あの虫はまだ不味い
  と負け惜しみ言って諦めたら
道風はただの人になって
歴史に埋もれていっただ ....
ここから先は立ち入り禁止
ガードもなくエリアラインがなくても
分かっているさ そんなことは

向こうのエリアの熟れたリンゴが
極彩色の芳香を漂わせてくる
閉ざされた花園には
咲き乱れる虹 ....
冬のベランダに
月の光が降り積む夜は
白く凍えて眺める空に
故郷の庭を思い出す

月の白い光にぬれて
赤いつばきも 寒菊も
色吸い取られ白く震えていた

就寝前に外の便所
白い庭に ....
七月のある日 兄は ぼくを呼んだ
風通しの良い部屋に一人伏せていた兄は
「今度は帰れないかも知れない」という
「弱気なことを…」
ぼくはそう言ったきり次の言葉が出ない

幼少時父も母も病で ....
若者が過去を振り返るのは
夢を実現するため
老人が過去を振り返るのは
夢を楽しむため
でも 
若かった過去へは行けません

***

別れるまで一度も名を呼ばれなかったからっ ....
平和3

手も足も頭も
引きちぎられた人々を
クロゼットや押し入れの壁に
塗り込めてつくられた平和
もはや 人間のうめきは
くぐもって外に漏れ出ない

人は闘争に美を見つける
   ....
灯火管制の都会の底では
光を漁って深海魚が徘徊している

魚卵たちの夢は皆カーキ色をおびて
時折光る虹色の粒は
懐疑が延ばす触手に喰われ
光彩を失う
幼魚は皆同じ方向を見てかたまり
群 ....
川を越え海を越えた向こう岸へなど
渡ることは考えもしないけれど
対岸に上がった火の手を見付けて
騒いでいる  
  ディスプレイの中で
  銃を構えてうろつく男を眺め
  騒いでいる
 ....
   迷刀スパイ

ぼくが国民学校に通っていたころ
鉛筆削りや竹細工には
折りたたみナイフ「肥後守」を使っていた
喧嘩のときも肥後守をちらつかせれば相手はひるんだ

その頃
日本では本 ....
ふんわり膨らんで
適度な蓄熱の布団
気分よく寝過ごし
急いで冷たく硬い空気のなかへ
緩んだ身体を放り出し
冷えた下着に包み込んで始まった朝

雨戸を開けると
微かな野焼きの臭いが漂って ....
きみが奥さんを残して
年の瀬も押し迫った雪の日に
ひとり先に逝ってしまったと
知ったのは娘さんからのメール

一昨年の夏 
共通の友の斎場で会ったときには
「お互いいい年だから葬儀には来 ....
子どもの頃
お天道様は何時もぼくの行為を
見張っていた

そして
お天道様は意地悪だった
自転車の二人乗りをしていると
石ころを置いて ハンドルを揺らし
転倒させるのだ
倒れながらち ....
前を歩いていたあなたは
病棟をつなぐ廊下の途中で 
ちょっと振り返って
「じゃあね」と
奥の扉に入っていったきり…

少し左肩を上げ 
口の左端を上げてほほえむパジャマ姿の
あなた ....
    ゴマフアザラシなど
    北の海ではひょこひょこと
    モグラ叩きのように頭を出し
    珍しくもないけれど…

その目は カメラを見つめていた
水面から顔を出し 身動きせ ....
友といさかい冷えた心で乗った電車
開いたドアからはいりこんだ冬の風が
通り抜けていく

二・三歳の男の子を連れた若い女が
隣にすわり 子を膝に乗せる

子の足がずれて
座席のあかいビロ ....
陽の当たらない玄関の
下駄箱の上に置かれたガラスの水槽
その中に金魚が一匹 

夏の宵
太鼓の音や提灯に囲まれた広場の
入り口で掬い取られて 
運ばれてきた

  たくさんの兄弟と泳 ....
日本には
人を斬るに便利な言葉がある

新しいゲームが欲しい子は
「みんながやっている」と刃をちらつかせる
優しい親は ゲームのできない我が子が
「みんなに」虐められそうな気がして
つい ....
箱の中に入っている人のこと
何も知らないのだがな 
どんな仕事していた人か 
どんな声で話す人か
葬式だから来いと言われてやってきたけれど
母の従兄弟と言われても 
母はとっくに死んで ....
人生に設定した目的に向け 
一直線に生きていける人はあるまい
散歩先に目的地を設定しても
一直線に歩いて行くことはない

前方の橋
大型犬を連れた女性がこちらに来る
わたしは 当然の ....
ぼくの中に少年のぼくがいて
ぼくの中をぼくが歩いている
ぼくの中を少女が歩いていて
ぼくの中を
何人ものぼくが歩いている

ぼくの中をあなたが歩いている
あなたは背を向け
ぼくの中でち ....
水面に風の足跡
揺れる山々

赤い花白い花

虫に食われ 
風に破れ 
ぼろぼろの葉

あれがぼくだよ

遠い日 
ほど良い大きさの
バスタブに浮かんだ生きもの

池の面 ....
壁に掛かった能面たちは
電灯に照らし出されると
生き返る

幼い子には
能面たちの話す声が聞こえるのか
じっと見つめ後ずさりする

激しい風雨の夜は
般若面が半開きの口の奥で
歯を ....
ブラックボディの
ノートパソコンを開け
キーボードに伸ばす手
を追い越し
パネルに伸びた指

夜明け前の画面に触れる指先
から泡立ち溢れる渦 
胸の傷口が割れて
大輪の洋蘭

隠 ....
山を背にした集落の
家家の屋根から突き出た鐘楼ひとつ
奥の旅を終えた芭蕉も伊勢に下る船上で
この鐘の音を聞いただろうか

港のあったこの集落に都会の風が吹き込んで
集落を縫う曲がり ....
腹の中

むかし 
おふくろは言ったものだ
「おれの腹断ち割って見せたいものだ
 真っ白じゃで…」
そう あなたは 
腹に一物持つような了見など有りはしなかった

だが
子ども達は ....
 妖怪


都会の妖怪は
昼間に出るらしい
夜は明るくて
隠れる場所が無いから

たとえば
人の途絶えた午後
ビルの屋上に出るドアの
前に佇む影

あるいは
休日の事務室に ....
           
    世の中にはあきらめの悪い男や女がいて
    失敗にもめげず研究を重ね
    ときには世間を驚かせるけれど…

昨年 クリスマスに
かがり火を焚いたシクラ ....
人間の住処に入り込んで
人間の保護するツバメの
まだ飛べない幼鳥を盗み取る
怒りに任せて蛇をつかみ

初めてつかんだ蛇
のサラサラした感触
ウナギのようなヌメヌメなど無い

以来 
 ....
今日は可燃ゴミ収集日
ゆるゆるゴムのパンツを捨てる

魚肉の切れっ端や野菜葛の異臭にまみれたパンツ
カラス除けのネットを剥がし
顔色も変えずに集めてくれる若いあなたがいる

履き替える新 ....
じっと見つめる白いディスプレイ
画面の深淵に広がる混沌
ぼんやりとした影がふるえているのだが
コーヒーを一口 指先で机を叩き
たばこを一本 目を閉じ頭に爪を立て  
五分 十分・・・
一瞬 ....
ただのみきやさんのイナエさんおすすめリスト(242)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
なんだか…- イナエ自由詩6*15-2-12
ささやかな冒険心- イナエ自由詩8*15-2-10
月の光が降り積む夜は- イナエ自由詩11*15-2-6
寒い夏- イナエ自由詩22*15-2-2
歳を取ったと気付かないあなたへ- イナエ自由詩9*15-1-31
平和_その三- イナエ自由詩12*15-1-28
暗い虹- イナエ自由詩13*15-1-17
対岸にいて- イナエ自由詩10*15-1-9
言葉の切れ味2_迷刀たち- イナエ自由詩14*15-1-7
打ち直した布団と雨- イナエ自由詩5*15-1-6
慌て者- イナエ自由詩10*15-1-1
神の誕生1お天道様- イナエ自由詩5*15-1-1
あなたは…- イナエ自由詩12*14-12-25
アザラシ君のオモテナシ_ー旭山動物園ー- イナエ自由詩6*14-12-22
母の胸- イナエ自由詩13*14-12-20
冬の金魚- イナエ自由詩16*14-12-15
言葉の切れ味1「みんなが」- イナエ自由詩8*14-12-13
棚から…_- イナエ自由詩8*14-12-3
橋・渡らない- イナエ自由詩10*14-12-2
心象__- イナエ自由詩18*14-11-26
睡蓮- イナエ自由詩9*14-11-23
能面- イナエ自由詩11+*14-11-19
水路に盛り上がる鯉を見た翌朝- イナエ自由詩7*14-11-15
時の鐘スケッチ- イナエ自由詩14*14-11-13
腹の中- イナエ自由詩11*14-11-9
妖怪- イナエ自由詩15*14-11-4
あきらめの悪い男- イナエ自由詩8+*14-11-3
狩りーぼくらは人間2ー- イナエ自由詩6+*14-10-31
パンツ来歴ーぼくらは人間1ー- イナエ自由詩6+*14-10-31
神様とぼく- イナエ自由詩16*14-10-23

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する