すべてのおすすめ
長い歩道が
河馬のようにみえる午後
男はあおいホースで車を洗っている
ふたりの老親と数十万程度の借金と
慣れ親しんだ不眠とが彼の歪な肩に載っているが
飛沫のな ....
誰のものともしれぬ侮辱が
枯葉とともに足元に落ちていた
ひからびた爪をもつ獣が屋外の
潅木の陰で忍び笑いをしていたけれど
あれで聞かれていないつもりだったのだろうか ....
雨はいつ止むのだろう
あなたの柔らかな胸のなかへ
いっぴきの野犬をときはなちたいのに
この雨はいつになれば止むのだろう
決意にみちたやさしさよ僕を睨め
凪より ....
ひかりが鉄柵をすべりぬけ
あなたの膝を白くよごした
煤けた骸だけがあるく目抜通り、
彼らのうたう寧ろふくよかな夜想曲に
暫し立ち止まったのだろうか、あなたも
....
ずっと、
戸は開いていたが
入ってくる者はない
おまえの魂が、刻一刻と
アケビの形に変わっていくのが
ここから見えているだけだ
夜以外の時間を少しでも
....
半刻ほど前から
組んでいた指をほどいて
あなたが落とす銀箔に似た笑み
ガソリンじみた水溜まりにひとつ、
爛れたショパンがしゅんと跳ねた
積まれた雑誌のうえに
毒茸がひとつ置かれていたはずだが
きょうは、かげもかたちもない
隠したのが彼女だということはわかるが
肝心の方法がわからないから憤懣やるかたな ....
敷布に押しこまれた
あなたのからだは私が
思ったよりはるかに固かった
きたない床をつま先でやりすごす
垢のういた日々が私たちの居場所だから
言葉のなかにかくさ ....
蜻蛉は交尾をおこないながら
我々の視界に掻き傷を残して飛ぶ
川沿いに歩きつつ、我々は幾つかの砂州を見る
明日にはまた違う形に変わっているだろうか
まだ我 ....
敷き詰められるように並んだ
黒い車たちは、なにものかの無意識の
先遣隊としての役割を負っていた
砂の詰った頭蓋で老人が嗤うが、
可笑しなことは殆どひとつもない
....
夜の芝生で
いるかは一度だけ跳ねた
手に拾えそうなほどの光が今日、
とおくの月やら星やら町やら、そんなものから
迷いこんできていたから、けれども
そのなかを泳 ....
なかば開かれた窓の傍ら、
揺り椅子で膝を抱えあなたは風を舐めている
なにもかもが 透明なジャッカルと化して
あなたの内なる屍肉を貪っているのだろうか
みどりいろの西 ....
土嚢でも背負っているのだろうか
きょうの町は、肩の辺りが硬く強張っている
木陰のところで音楽は重なりあって死んでいる
物欲しげな野犬は吸い殻に鼻を近づけやがて立ち去った
....
しろい頬をこちらにむけて
月が肩をふるわせている
窓の外から、じっと
石でできた町がぼくを見上げる
けれども雨がふっているのはまだ
きみの瞳のなかでだけ
....
入り口の方にあなたが立っていたが
出口の方にも同じようにあなたが立っていた
べつに邪魔をしているわけでなくただ立っているだけのこと
そういえばそのような薬物をわたしはどこ ....
暗号は箪笥にしまわれていたが
防虫剤の匂いに毒されもう使い道はなかった
幼少期に誰もが熱をあげやがて棄て去った玩具同様
為されるべきことは二、三あったものの
その手 ....
一日中、
こわれた雨樋をみていた
網戸にささって死んだ虫をみていた
あなたがこのよにいきているなら
わたしがしぬことはぜったいにない
わたしたちのなかで 言葉 ....
そこの膝掛けの上に置かれている
一匹の沢蟹なのだが、
数日前にある男が用いた
あわれな比喩の成れの果てだ
今となってはその詳細は思い出せない
それに彼は十中八 ....
夏影を
蛇の身がなぞる
あおじろくつめたく
すべての陽がきえていく
汗が鎖成す、おまえの鎖骨
はきつぶされた靴は
あなたの手にひろいあげられ
鳶の影は 青い空を円の形に縫う
午後、けれども其処彼処の綻びから
光は果物のように落ちてくるのだろう
シャツの色をわすれた
自転車を仲よくならべた
川沿いの道にいつもあった
だれのものとも知れないさびしさ
三日月にすこし濡れた
きみの膝こぞうをそっ ....
窓に背をむけて
なにかを書きとめていた
あなたに小さく呼びかけた
微かな灯りのともる夏、
砂のまじったわたしの思いは
野良猫のとなりで寝ていた
わたしの心が
くらげのかたちになったら
会いにきてくれますか
手のひらに月をすくい
くちびるを歌でみたし
むかえにきてくれますか
わたしの心 ....
きみの手についていた指は
たしかにきみの手についてはいたが
なんだかきみのものじゃないみたいに
肩におちた長い髪から 夕暮れの光をとりわけていた
わかることも わか ....
部屋には、いつもあなたと
夏草のにおいがあふれていた
なにもきこえないほど私たちは笑っていた
開いていたドアの四角いところで
陽の光が 涙をこらえていた
その夏は、
白い壁に囲まれていた
ただ、陽射しだけがまぶしく笑い
ただ、樹々だけが言葉を歌にして
いつの日も きいていた その壁は
あなたの声のようにきこえる ....
あなたの意識の薄明のなかで
一匹のアルマジロがその躯を{ルビ捩=よじ}った
川辺には大小様々の板が砂を冠りねむっている
樹々に秘められた古くからの熱と
物語の奮えを ....
破れた袋から
{ルビ薄暮=はくぼ}がこぼれていく
それは一度として充ちたことがない
夕風を控えめな紅に染めはするが
あのときあなたが入組んだ顔で
言いかけたこ ....
ひび割れた手がひとつ
水の底からあなたを呼ぶ
あなたの耳は砂の塊ではない
あなたの魂は揺らめく焔よりも眩しい
それをわたしたちはよく知っている
生きている老人と
死んでいる老人のあいだに
いくつかの指がならんでいる
老若男女あらゆる者から{ルビ捥=も}がれてきた
それらはまるで枕木のようなのだ ....
ただのみきやさんの草野春心さんおすすめリスト
(272)
タイトル
投稿者
カテゴリ
Point
日付
敗北
-
草野春心
自由詩
3
15-1-9
潅木
-
草野春心
自由詩
4
14-12-28
雨の歌
-
草野春心
自由詩
6
14-12-23
空耳
-
草野春心
自由詩
3
14-12-20
魂
-
草野春心
自由詩
6
14-11-18
爛れたショパン
-
草野春心
自由詩
8
14-10-29
硝子の音
-
草野春心
自由詩
4
14-10-23
雑巾
-
草野春心
自由詩
5
14-10-13
砂州
-
草野春心
自由詩
2
14-9-21
先遣隊
-
草野春心
自由詩
2
14-9-21
夜の芝生
-
草野春心
自由詩
7
14-9-7
嗤うジャッカル
-
草野春心
自由詩
4
14-8-31
移住
-
草野春心
自由詩
8
14-8-24
砂の城
-
草野春心
自由詩
5
14-8-23
悪魔
-
草野春心
自由詩
6
14-8-20
我々の暗号
-
草野春心
自由詩
7
14-8-17
雨樋
-
草野春心
自由詩
8
14-8-10
あわれな比喩
-
草野春心
自由詩
4
14-8-3
蛇と鎖骨
-
草野春心
自由詩
4
14-8-3
綻び
-
草野春心
自由詩
5
14-7-25
恋は三日月
-
草野春心
自由詩
7
14-7-20
野良猫
-
草野春心
自由詩
4*
14-7-13
わたしはくらげ
-
草野春心
自由詩
8
14-7-12
よその猫
-
草野春心
自由詩
5
14-6-29
ドアのところ
-
草野春心
自由詩
4
14-6-29
あなたの歌
-
草野春心
自由詩
3
14-6-28
マトラカ
-
草野春心
自由詩
2
14-6-22
破れた袋
-
草野春心
自由詩
2
14-6-22
ひび割れた手
-
草野春心
自由詩
2
14-6-22
枕木
-
草野春心
自由詩
3
14-6-11
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
すべてのおすすめを表示する
推薦者と被推薦者を反転する