えー
目下のところの目標は
全国縦断ツアーをやりたいです
小さな港町
あるいは政令指定都市
アリーナとはいわないですから
ライブハウスでオッケーですから
まあ
問題は
うたをうた ....
夏にゆうれいがいなくなってから
夜はとても蒸し暑くなって
何だか過ごし辛くなった
ゆうれいを捜しに
ときどきぼくらは心霊スポットに出掛けるけれども
工事中にたくさん人の死んだトンネルにも ....
雨が降っていた
暗い門の下で
男が三人いて
僕がその一人だった
門の先に続くのは
センチメンタルな山道だ
雨が小降りになってきたので僕は歩き出す
男が「大丈夫かなあ」と言っている
....
香気がどこからかぼくの指にしみこんできた
朝日はいつの間にか木陰を
ありありと作るくらいに大きく育って
父は病んだ体を褥に起こして
指先から瑞々しい桃の果汁を滴らせながら
桃の果肉を噛み砕い ....
今、生きている人間が必ず1度は経験する事柄があります。
全員、おしなべて、例外なく、絶対に、です。
それは、
この世に生まれる事と死ぬ事です。
人は誰でも、必ず親から生まれたから生きて ....
500円玉貯金して
ジャンボ宝くじを買う金がない
そんなことじゃ
いつまでたっても金持ちにはなれないだろう
頭を使って
金を使わず
金を使って
気を使わず
....
負けたから
取り壊されると思ったが
取り壊されることはなく
たくさんの格好いいクルマを載せたまま
空に向かって翼を拡げる日が来ると
信じている
自分がさらけ出されるものであって、
自分をさらけ出すものではない。
参道下の古ぼけた店で
岩魚の塩焼きを齧る
雨が降ってるので
ゆっくり と齧る
しらやまさんに降った雨は
百年後の加賀平野を潤す
その雨が
降っているので
ゆ ....
男は冷蔵庫の中で傘を飼育している
夜の方が良く育つときいたので
朝になるとわくわくしながら傘に定規をあてるのだが
傘の長さが変わっていることはなく
その度にがっかりする
けれど男は知 ....
世界のフィーリングで今ぼくは奇跡
よく聞いてよ星のくしゃみを
ためいきがピンクになるまで愛し合う
カーテンを閉めるまでの人間形態
×と書かれた改札にも入 ....
藤の実が剣のようだ
ものすごい湿気とものすごい気温の中
藤棚の下で目を閉じて
何も見ない
藤の実が剣のようだ
おそらく
噴水の前を通り過ぎる自転車のベルも
風鈴のようだが
でもそれはも ....
「私のひと押し詩人」というテーマでの依頼。
ひと押しというか、好きな詩人は、
1.有名で今さら紹介する必要もない人
2.ひっそりと書いていて紹介なんかされたくない人
だいたいこ ....
その女の乳房は
四月の桜のように満開で
うすももいろの
空にも恥じない明るさである
肌色は世界に開き
柔らかな匂いで部屋は満たされる
私は小さな白磁の杯で
そうして
お前の笑顔を嗜 ....
この街にディグミーランドができるという計画を聞いてから五年が経った。思えば気の遠くなるような長い時間だった。
子供の頃からディグミーのアニメが大好きだった。とりわけニッキーマウスはおれの大のお気 ....
真昼、
通りの向こうで叫びがあがったが
どうしても人間の声にはきこえない
おれは対角線上を通りすぎ
日陰から振りむくが
すでに何も見えない
何が叫んだのか
何を叫んだのか ....
霧雨の降るぼやけた朝の向こうから
「夢の国行き」と{ルビ記=しる}されたバスが近づいて来る
後部座席の曇りガラスを手で拭くと
数ヶ月前に世を去った
認知症のゑみこさんが住んでいた{ルビ空家 ....
「いらっしゃいませ、ありがとうございます」
レジスタァの前に沢山の女の人が並んでいる
僕は美人のお姉さんには、優しくお釣りを返す
ナプキンは袋を二重にして入れてあげたりしている
綺麗なお姉 ....
かあさんは裏庭にチガヤを植えなかった。
壁を緑に塗らなかった。
とうさんは健康的に山を登り、
かあさんは家で本を読み、
かあさんはおもての庭に紫陽花を植え、
家の壁は地味な灰色に塗られた。
....
疫病が蔓延して
またひとつ
古い村が捨てられた
縦穴住居跡には
いつも怯えたような
青白い満月がかかる
古代を復元した月が
青白いのは空気が澄んでいたから
ここにも ....
ぼくがむかし見た、
ユリの花。
もし風のリボンが、
覚めない夢ならば、
きっと明日には消えてしまうでしょう、
魂に関する一切の記録、
涙に関する一切の記憶、
風に揺れる
一輪のユリを残 ....
わたしは、ほんとうは楽譜なのです
と 告げたなら
音を鳴らしてくれるでしょうか
指をつまびいて
すこしだけ耳をすましてくれるでしょうか
それとも声で
わたしを世界へと放ってくれるでしょうか ....
雨に濡れるのを忘れた人が、信号の前で返り血を浴びている。どんよりと、ただどんよりと生きていけ。おまえの夜の病はいまだ進行中だ。魚群探知機に映る影の人びと。探そうとしてもけっして探し当てられない影の呼吸 ....
深夜にテレビのスイッチをいれた。
テレビは番組を映し出した。
「どうだ?」 テレビがきいた。
「べつに」 僕はこたえた。
番組の中で観客が笑い声をあげた。
「笑わないのか?」 ....
男は長い間カバンの中に住んでいたが
ある日旅をすることにした
もちろんカバンを忘れなかった
昼間は旅を続け
夜になるとカバンの中で寝た
朝起きると同じ場所にいることもあったし
誰かの手 ....
赤毛のアンが
最上段を占拠する
姉の本棚
なんか短歌じみた書き出しだねと
老母が笑う
子供の頃
映画女優のようにその名を
アンの名を親しげに聞かされていたから
実在の人物の ....
閉店した金物屋の横の路地
その腕には重過ぎるであろう袋を抱える少女
− きみのなまえは
これはこわれたゆみよ
− きみのなまえは
これはわたしがとめてしまったじかんなの
....
エリンギとはなにか
考証してみた
いや
考証しようと考えた
名前の
瞬発力からは
超能力のある
伝説の占い師の名前であろうと考えた
古来、占い師は
男である場合が多い ....
「心霊写真持ってるって? 見せろ見せろ」
「これだよ」
「高校の集合写真か。で、霊はどこなんだよ」
「これが俺だ」
「若いなーお前。それより霊はどこだっつーの」
「これ、一人で写したんだ…」 ....
あなたがトースターなら
わたしはパンになりたい
あなたの熱でわたしは焦がれる
あなたの想いを体に刻んで
あなたがトースターなら
わたしはパンになりたい
あなたが刻んだ熱を残 ....
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