卵と牛乳をかって
うちへかえろう
わたしは明日もそこで
生きていくのだし
とおくに住む
あの人はきのう
のいち、になった
十万分だか百万分だか
分からない
のいち、という
数字になった
みんながみんな
ごっちゃになって
失われてゆく
いちどきに
とおく ....
タイムマシンは
ないけれど

あるんだよ

にじゅうねんぶりに
ふるさとへ
かえってきた

もうもどれない
タイムマシンにのって
髪を伸ばしたんだね、と聞かれて
「ショートカット」と答える。
不思議そうに私を見つめる
あなたへのショートカット
案山子になりたい
畑の真ん中に
片足で立ってみる
結構いい感じで
鳥たちと仲良くなる
農家の人は優しく
話を聞いてくれて
夜は立ったまま眠り
五年は帰らない
ペットボトルで
金魚を飼っている男が
近頃は断水が多くて
ままならないという
言いながら口をつける
そのボトルの金魚が
今飲まれるか
今飲まれるか
気になって仕方ない
さっき捕まえた蛾が
腹をひくひくさせていて
卵を産むのかと思う
葉の上に置いてやると
動きが止まり
腹を破って
なにかの虫がこぼれる
その虫が世界に広がる
古い人体解剖図
の中の男に
愛をささやかれる
雨の中で
人だけがいない
獏園

時が経つと
美しい観光地になる
おまえがなけりゃ ああこんなにも哀しい日々 
ぽっかりと穴のあいた虚しさよ
おまえがなけりゃ人生は こんなにも 
ゆたかになるはずがなかったのさ
歓びの朝も 愉しい午後も
夜には星のささや ....
他人に

嘘はつかない

もったいなくて
月が美しい時、その下で、犬や豚や、
うさぎやらくだや、馬や鳥が、痴れたり、
うずいたり、つかえたり、
引きつったり、しゃくにさわったりしながら、
季節売りが立ち止まって、
次の芝居を始めるま ....
 いつまでたっても上手く開けられなかった菓子包みをあなたは、つるりときれいに解いていたね。そうして僕は、クッキーを手に入れたりした。あなたは模様の付いた包装紙を四角くたたむと、冷蔵庫のとなりに差し込ん ....  
風が椅子に座っています
姿も見えないし
形もわからないけれど
確かに風は
椅子に座っています
そして別の風が来ると
席を譲り
静々と、時には荒々しく
立ち去っていきます
次の新 ....
虹がかかると
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
水なのです

風がそよぐと
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
波なのです

町が見えると
いうけれど
ほんとうはぜんぶ
光なのです
 ....
わたしが覚えた涙のあまみは
傍らの辞書によれば
もろみ、と呼ぶそうで
カーテン越しの陽射しの匂いは
ときどき広くて
ときどき鋭い


いつか見た夢の数々が
今でもずっと夢なのは
 ....
待ちぼうけのカフェで
冷めかけた紅茶をもてあそぶ
スプーンのあてどなさ

間延びしたリビングで
戴き物のゼリーをふるわせる
スプーンの退屈

行きつけのファミレスで
カツとカレー ....
冬枯れの畑に立って
鯨色のジャンパーを着込んで
二月の夜空を見上げ
父の書斎で拝借した
古ぼけた万年筆を
夜のインキに そっと
ひたし 流れる雲の
切れ端に綴った
あなたへの手紙です
 ....
階段の灯りをLED電球に交換した
ちょっと薄暗いけど

四万時間の寿命だという
居間から二階の寝室まで
三十秒あれば昇りきるとして
電卓をたたいてみた
五十年は切れることはなかった
ぼ ....
夕暮れるのに少しだけ
早い時の中を自転車で
漕いで回れば耳に届く
ピアノを練習する
くぐもった音色や
郵便配達のカブが
ダダ・ダダと駆ける音
引き戸をカタカタカタ
と閉める音
家に帰 ....
こころの場所を探してみましたが
結局、わかりませんでした

たましいも
いのちも
しも

どこにあるのか
いまだにわからないでいます

さっき電線にとまっていた
たくさんの鳥 ....
機上で
伯母は落下し脳挫傷で眠る孫の為に
満腔の震えを帯びた痩躯を折り
瞑目で何やら呟きながら手かざしを始めるのだった
高度1万2千メートルからの この上なく真摯な神通力が
ポリカーボネイド ....
今から本を読むため
返信はそのあとで
それから、
お腹が痛いから
出発は明日にします
どうして涙がでるのだろう

水に戻ると書くように
海から生まれた僕たちの
からだの中の塩分が
外へゆこうとするからなのか

どうして涙がでるのだろう

広い世界のかたすみで
こんな ....
発音法は本で学んだ
息をはくとき、のどをふるわせ
音をつくる
これがなかなか難しい
僕の場合、17日間つづいた夜のおわりに
はじめて成功した


口とのどをひらいて アー
口をすぼめ ....
最初フットボール大の素粒子だった

それが爆発して

今日も宇宙は拡散している

宇宙の果てとはどんなだろう

果てのむこうはなんなのだろう

フットボール大の素粒子のころ

 ....
  だだっぴろい教室で
  子どもたちは
  おもむろに武器をとった
  守るためではない
  苛むためであった



  かれらは笑うだけだったけれど
  かれは泣くだけであっ ....
ごめんなさいで済むから
警察官は要りません


病人がいないので
お医者さんは要りません

みんなが歩くから
車屋さんは要りません

本当に自由の国なので
政治家さんは要りません ....
この像もまたなにかのものまねをしているのだ。

ここにいつまでもいたいと思った。

存在のものまねをする存在への、それは畏敬であるにちがいなかった。


重要文化財でもある東寺の五重塔は ....
 棚が倒れて割れた窓ガラスや試験管
 フラスコやビーカーが床に散乱している
 海水に浸された真綿が入るシャーレが傾いて静まっている
 実験室の椅子にすわるかれの顔をおぼえていない
 ....
マフラーマンさんのおすすめリスト(185)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
卵と牛乳- はるな自由詩3*11-8-22
数字- 佐倉 潮自由詩311-8-17
タイムマシン- 小川 葉自由詩211-8-14
ショートカット- くしゃみ自由詩311-8-12
案山子- 春日線香自由詩511-8-11
断水- 春日線香自由詩511-8-8
拡散- 春日線香自由詩411-8-7
秘密- 春日線香自由詩211-8-5
圏内- 春日線香自由詩211-8-2
珈琲讃歌- とろりす自由詩511-6-10
価値- 日紫由自由詩311-6-10
夜、交差点、ダダ- クマクマ自由詩411-6-3
手紙- 佐倉 潮自由詩511-5-20
童話(着席)- たもつ自由詩611-5-14
愛のふしぎ- 佐倉 潮自由詩511-5-2
午睡- 千波 一 ...自由詩3*11-5-1
スプーン- nonya自由詩15*11-4-23
夜のラブ・レター- 佐倉 潮自由詩311-4-18
あどけない話- たま自由詩21*11-4-18
小さな楽団- 佐倉 潮自由詩811-4-16
目の前のすべてが不確かに見える日- 小原あき自由詩5*11-4-16
聖域- salco自由詩9*11-4-13
延期- はやき自由詩211-4-9
どうして涙がでるのだろう- ベンジャ ...自由詩611-4-9
発音法- kawa自由詩411-4-9
宇宙の果て- 吉岡ペペ ...自由詩411-4-7
沈黙- 草野春心自由詩4*11-4-6
つみをあやまる- 村上 和自由詩611-4-4
畏敬- 吉岡ペペ ...自由詩311-4-3
廃校に立つ未来の子どもたちに- 石川敬大自由詩19*11-4-2

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