恋人たちが
裸になる夜は
計算が合わない
数が音に
なってゆくから

建築物の息づかいも
聞こえてきたよ
スポンジみたいな
緻密なリズム

さびしさの背中に
スプーンを落として ....
あなたは 大きな氷をひとつ入れたグラスでお酒を飲むのがすきだったから
わたしも今日はまねしてみた
酔っ払ったら泣けるかなと思ったけれど
いつまでも静かだった
氷が割れてしまっただけだった

 ....
奨学金の返還誓約書を提出しなきゃいけないとかで
今日、はじめて三号館という建物の七階までのぼって
はじめてそんな高い場所からこのキャンパスを見おろした

僕は、
四年もこの学校に通って
そ ....
某所で、
>意味がわからんと言っていた軟弱者が何人かいましたが、
>意味を伝えるだけなら詩なんか必要なないじゃん。
>詩は作者と読者の共同作業であるべき。
>僕が1から ....
ふたしかな水を生きて
行方のどこにも底がない


くうかんを蹴りあげて
足音を確かめる
ひかりは、
柔らかくかげを踏んで
どこか遠い国になった。



どこまでも水。
ぼく ....
片足を曳いて
空を登る
これは頂上から下げる予定の頭
導く、斜陽は赤く、大きく
目を伏せる、花は白く、不気味に
大きく
わたしを
きみを
祝福して
大きく散るだろう花の学術名を手探っ ....
なだらかな坂道を
だらだらと歩いている
なさけない言葉たちを
だらしなく発しながら
なまめかしい誘惑には
よだれを垂らしている

なよやかにしおれているふりをしている
なんとなく日 ....
 


君のみどり色のところを
ぜんぶ
静かにしてしまおう

僕たちのゆびさきは
それはきれいな舵だ
このすこしの世界では
なくこどもと
あくたの色はもう見えない
ただ
朽ち ....
排他的な女の子は空を所持している。
その底のほうには、白くてきれいな宇宙船や、手垢できたない算数の教科書、軍隊の格好をしたキューピー人形や、プラスチックのマニキュアの瓶が、ざくざくとはめ ....
 


祭日からあふれて ころげた人々が
やたらにぬらしたので
台所に立つのは ずいぶんひどい
はだしか靴ならばとも思うが
僕は あたらしいくつしたなので
戸口のところからのぞいて
 ....
***

樹の緑から飛び立った鳥の黒い羽の音を
夕立のたびごとに絵日記に貼り付ける
それが毎日の日課になったころ
子供たちの影だけがきれいにアスファルトの上に焼き付けられている
 ....
ことばに
すくわれたかった
だから
ほんをひらいた
けれど
ほんのことばに
こころはなかった

ことばに
ころされたかった
そんなときも
ほんをひらいた
けれど
ほんのことば ....
摂氏36.5℃で凍てつく切なさは、雪降る夜の電熱灯の明かりに似ている
欲した物は手にした瞬間色褪せていって、わたしをその都度落胆させた
言葉でさえくちびるを離れたときからこの肉体を棺桶にして死んで ....
 ふと気配を感じた。とろりとろりとしたみずあめの海の奥深く、おおきな生き物の影が、ちらと見えた。息が苦しい。水が欲しいな。いっそあれに捕食されてもいい。おおきな生き物はそんな思考を察してか、ゆっくりと .... 僕と踊りませんか?
産まれたての死人が言った
もう一度、聞き直そうとしたが
既に腐り始めていたので
棒でつついてそれきりにした

でも本当はすごく嬉しかった
素敵な言葉だなと思った
だ ....
葉っぱたちのとがったきっさきをさっきから風がはげしくゆらして
じべたに並べられた各種弾頭のことを考える
雨上がりのひんやりとしたゼリーのような中を
ゆっくりと自由に空気を押しながら
あたしは記 ....
{引用=
Meruki『海に似た形の』
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=151980



 何から話し始めるべきだろう。この作品の「彼女」、 ....
海辺で

***

あなたは
丁寧に研がれた小刀をひとつだけ持って
後ろ髪をひと房ずつ殺ぎ落としてゆく
かさばるから そういう理由で置き去りにしたのは
一度だけではない だ ....
「なにも着ていないの? ひとつ
あまらせているから、きみにあげる。」
待ちに待った、台風の日です。
家に上げたら、育つのにどのくらいかかるの
か、あと数秒で折れてしまいそうなきみが傘
で ....
口の中に微かに鉄の味がある
コートの袖口が擦り切れている
錆びたドラム缶からはいだして
月下の廃工場を後にする
奏者を失って久しい機械が
ほの青く光る一群の風琴になっていた

鳥が飛び立 ....
{引用=
                 青
                左手で
雨              散り飛んだ
ずっと           滑らかな炭酸水
嘘のまま     ....
全ての旅立つ人のために

***

湯気を立てているお茶のカップと
小さく開いた窓から差し込む朝の光と
四月の風に揺れる薄いカーテンを
置き去りにしたままで部屋の鍵をかける
 ....
すれ違う人たちの
魂の先端を少しずつ摘み取ってはポケットに入れる
ひっそりとした動きなので
たいていの人はすれ違っても何も気付かない
ときどき
けげんな顔をして立ち止まり
胸の辺りに手 ....
まよなか
くらやみの中から線路が延びている
金属のレールの上に耳を触れると
同じ路線の上を歩く子供の足音が遠くに聞こえる
もう帰らない
もう帰らない
稲穂が風にしなう
線路か ....
カラビナ、切っていくんだろ
お前の自我が燃えている
こちらの電車が燃えている
スタンダードな鉄柱の
かすれた声は裏側に
山手線の内側で
正しい摂理を殺したら
徐に雨が降っていた

足 ....
{引用=
yuko「まいそう」
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=136784

*この論考はひとつの詩作品に対する考察でありながら、ある「歪んだ妄想 ....
結局のところあなたについて書くほかはないのだ。
選択肢は常に目の前にぶらさがる。
埃だらけ蜘蛛の巣だらけのシャンデリアみたいに、
ぶらりぶらりと。
肝臓の色をした月に腎臓型の雲がつかみかかる。 ....
バスにもたれて揺られていると
なつかしいひとが乗り込んできて
私のすぐ後ろの席に座っている

バスにもたれて揺られていると
いつのまにか、どの乗客たちも
花びらになって ....
この手紙があなたに届けばいいと思います。
お元気ですか。


こちらでは、毎日少しずつ、何かが消えていきます。
壊れるとか、崩れるとかいうのではなくて、
昨日までそこにあったものが、今 ....
情緒に問題あり、と
言われた、三者面談で
帰り道、お母さんが
泣いていた、自転車の
荷台で、情緒の意味を
分かりかねていた
テンイヤーズオールド


西日のまぶしさだけ
息が詰まっ ....
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