すべてのおすすめ
安売りをしていたので
星をひとつ買った
命名権付きということで
相応しい名前を小一時間考え
以前飼っていた犬の名前をつけた
部屋の電気を消すと星は仄かに瞬いて
偽物みたいに綺麗だ ....
小鳥たちの鳴き声
ここはドームだろうか
不思議と羽の音がしない
首筋から胸もとにかけて
蝋の塊は溶けて垂れていた
とっくに扇風機は止まっているのだ
目が覚めるのはいつもこんな調子で
....
どうして
アスファルトで覆ったのでしょう
芽生えようとしていた希望が
誰にも知られず
死んでしてしまったら
訪れた春は悲しむでしょうに
心地良い朝を吸い込んだら
迷子のオキシダントが
途方に暮れているのが分かった
悔しすぎて歯軋りしたら
心配性のフィブリノーゲンが
身構える気配を感じた
本当を言い当てられて黙っ ....
それは鉛の重力で
垂直に私を引っ張るので
テグスに結び付けられた浮きのように
私は
水面に立っている
もうふわふわも
ぐらぐらもしない
磁針のように空を指し
己を標として生きるのだ ....
病気切り取ってくれた君ごと捨てる
人指し指
中指の息
硝子の欠片
それぞれの目に
異なる子のうた
うなじから背へ
ひろがる岩
空へ還る痛み
怒り 苛立ち
羽から心へ過ぎてゆくふるえ
....
それぞれの想いに世界を覆う空気がマーブルに
色を成して 溶けてゆく
包まれている
私が体験した訳ではない友人の痛み
ただ立ち尽くしながら体中から煙に塗れるように語りかける
....
ものごころがついた頃から
僕はどこまでも透明に近い
風船だった
鳩時計式の心臓から伸びる
静脈と動脈が一番こんがらがったあたりに
震えながら潜んでいる僕自身を
誰もがたやすく見つけ ....
心文字ひとつ摘まんで放る
向こう見ずを
他人より先に
僕は笑う
打ち寄せる波音
胸の辺りに
掛け違えた言葉
打ち寄せる
タワーの影に潜り込み
....
どんなに高い山に登っても
ビルにあがっても
下ばかりみてしまう
ちいさくなった車や
家をみてしまう
それなのに地上にいると
空が恋しいなんて
寝ころんでみる
白い雲は
な ....
干瓢巻きは
難しい
お客様にお出しするまで
手間も時間も
職人の真心も
たっぷりとかかる
干瓢は戻す前に
海苔よりいくらか短い板に
巻きつける
余りを切り落とす
そうすると煮た ....
ほんとはゆかりんやほっちゃんの話をしたかった
ほんとはラブプラスのはなしをしたかった
ほんとは自分のはなしをもっとしたかった
ほんとはもっと彼氏のはなしをしたかった
ほんとはもっとアニメのはな ....
赤ん坊は
夕暮れに
いつまでも
放り出されている
大人は
夜に
かえっていく
夜じゅう
あのときは
美しかったと
小さい声で
話している
顎に火を受けて
あの ....
腹の中
むかし
おふくろは言ったものだ
「おれの腹断ち割って見せたいものだ
真っ白じゃで…」
そう あなたは
腹に一物持つような了見など有りはしなかった
だが
子ども達は ....
かつてキッチン(というよりは台所)は裸電球で照らされた寒い島だった
幼い私は台所のことを「だいどこ」と呼んで入り浸っていた
窓からは川へ下る坂道と隣家
(といっても音なんか聞こえないくらいには離 ....
「阿」
宇宙のはじまり
命のはじまり
言葉のはじまり
はじまりの吐息が
外側をふるわせる時
内側のふるえは
色となり
音となり
文字となって
世界を創りはじめる
....
強烈な風雨を受けて
折れてしまった月下美人の葉を
何気なく水に差しておいたら
根が出た
その後も根は伸び続け
葉のくぼみに蕾をふたつつけた
さすがに花を咲かせることはなく
....
ROKUROKUBI (ろくろ首)
夕暮れの観覧車に
絡みついた
わたしを解いて
BMWの助手席に
しがみついた
わたしを引き抜いて
あなたの吐息と唇が
辿った
....
あんなに晴れ渡ってた空が
信号は赤
車の通りは少ない
夕方になって
ポツリときたと思ったら
ザーザーがきて
こちらには雨宿りの建物はない
信号は赤
みんな走 ....
工場の裏に生えた草を抜いていて思った
この国は何て豊かな国なのかと
何もしなくてもこんなに沢山自然に草が生える
知らない名の草が生える
1ヶ月でこんなに生えるなんて凄い生命力
しゃがんで ....
葡萄色のゼリーのような海と空は
きっと絵のように美しい
いいえ きっと海の ほんとうは 絵なんかでは 表わせない
憶万の色と光と影を 海と空は もっているのだろうから
けれど わ ....
尾鰭も背鰭もない者だから
スクラップブックから拾ってきました
この気怠さの海を泳ぐ
艶めかしい夏の生き物たちを横目に
白い爪痕も心地よい
日焼けした空をまる齧りにします
スイカ ....
飛ぶ
ということを手放して
風を作る
ということを手に入れた
君は無口なプロペラ
人間が涼む
猫が涼む
テーブルの上のうすい紙切れを
宙へ舞い上げる
いたづら
わたしに見え ....
潮風と鉄錆びの匂いがする
寂しい港町に住みたい
そんな街に住む人達は
どこか遠い町から流れ着いたから
いつも風が體を吹き抜けていく
頑丈な靴を履いて
身構えながら
何時でも何處へでも
....
しんしんと夜の降り積もる
時計の針をすすめているものは
いったいなんなのだろうか
森深く一角獣のみる夢が
遠く聴こえる気がする
こんな夜にふさわしい響き
一角獣が問う
あなたの角 ....
あの信号が変わる前に渡れたら
きっと うまくいく
ありふれた願を懸けた
決して走ってはならない
ありふれたルールを課した
早歩きがどんどん早くなる
早歩 ....
犬と歩いていた畦道
蓮華草の洪水、うららかな風
晩春の自然は生命を礼賛していた
突然、犬が強く引っ張る
そして、嬉しそうに吠える
畦道の行く手に
冬眠から覚めた蝮が横たわって
ぬらぬ ....
*
光と風の音楽隊の
ゆるやかな旋律が
コンクリートの迷路に
色の音符を落としていく
緑はさざめき
花はときめき
道はほくそえみ
人の睫毛はほほえむ
*
渋 ....
すべる 若葉の上を
果てしのない空の歴程を越え
円い揺りかごに大地を包む
はねる ピアノのように
ひび割れた思想の冷たい黙示の上を
目覚めの兆しを死者の鼻先で踊る
はじける 終わり ....
1 2 3 4 5 6 7