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  空き缶がある
  中に一匹の蝿がいて
  ぶんぶんと旋回している
  わたしの耳に聞こえている
  耳にだけ聞こえている
  蝿は蝿を欠いている
  蝿は蝿を欠いている
   ....
  真夜中
  あなたは赤い花弁に
  最後の口づけを済ませ
  ぼくの背中に取り付けられた
  古い扉を抜けてゆく



  そこから先が
  本物の冬
  煙草を吸 ....
  正午ぐらいに
  この公園の上空に
  赤い飛行機がやってきて
  幾つかの小石を落としてゆくのを
  その妊婦はじっと待っている
  背板にコカコーラのロゴが
  描かれたベ ....
  私があなたを好きになった日、
  私の心は赤かった
  闇夜に灯った明るい火の輪
  一頭のライオンが駆けてきて
  ひと跳びにくぐり抜けていった
  その先は草原になっていて
 ....
  暗い夜には
  一羽の鳥がやってきて
  私の口に潜り込むと
  枝を使って舌根の辺りに巣を作り
  数個の卵を産みつけ飛び去ってゆく



  朝、私の舌で
  殻を破 ....
  もう一人の男が
  頭上にぶらさがった紐を引く
  紐は暗闇に続いているから
  暗闇が落ちてくる
  どさりと一斉に
  砂袋から砂が溢れるように



  完璧に渇い ....
  あなたの腿に
  手を置く



  その
  柔らかさの奥に
  生きていることの
  鋭いさびしさがひしめいていて



  ぼくの心に
  さっと
  一 ....
  九月の市民球場を
  木枯らしがさらってゆく
  土埃を巻き込んで
  ピッチャーのいないマウンドと
  帰る者のないホームベース
  永遠のような
  0対0
  僕は欠け ....
  ゆうべ
  きみのまとう
  しろい布にふれました
  それはやさしく湿っていて
  かみさまの一部のようでした



  ゆうべ
  窓のそとでは
  たくさんの雪が ....
{引用= 「いくつかの骨」

  お前の
  すべすべした手の甲の
  化膿した傷口から
  いくつかの助詞が突き出ている
  それは月夜の骨のように
  生々しくも無機質だ
 ....
  透明なせせらぎが遥か遠くで
  岩の間をくぐり抜けてゆくのが
  聴こえてきそうな三月の朝
  いたずらな顔をして君が
  せがむみたいに背伸びをしたから
  僕たちは口づけをか ....
  六月
  君は椅子に掛けて
  ジグソーパズルをやっていた
  薬缶が沸くのを待ちながら
  壁にもたれて
  僕がそれを見ていた
  六月
  外は雨で
  夕方の部屋に ....
  朝の町は
  赤く輝いている
  透明な蝶が群を成して
  燐粉を煌めかせ舞い飛ぶ
  駅へと続くなだらかな坂道
  冬空に灰色の息を吐き
  自販機でコーヒーを買う人

 ....
  顎鬚をたくわえた男が
  布を手に玉蜀黍を磨いている
  小屋の外に置いた籐椅子に座り
  一心不乱に



  遥か上の方で青空が
  ずっと前に動きを止めたことを
  ....
  僕らがコンビニと呼んでいる
  長細い直方体には
  どんなものでも揃っている
  弁当もポテトチップスも
  洗剤や電池や、ティッシュまで
  だから僕がその日
  その、冬 ....
  6つ全ての面に
  60と書いてある
  拳大の立方体
  それにそっと手を触れると
  彼は吸い込まれてゆく
  ゆっくり
  60分かけて



  彼がすっかり吸 ....
  縄文土器を
  保健室に忘れてしまい
  取りに戻った
  夏の日



  熱く
  熱く光は燃え
  廊下を歩く人たちも
  ブラスバンドの行進曲も
  そう仕向 ....
  鮮やかな桃の色をした
  あなたの大切な鞄が
  線路の上にある
  今は秋の朝
  未だ人のまばらな
  プラットホームから眺めるとそれは
  轢かれるのを待っているように見 ....
  あなたを
  埋めてしまわなくては
  なりません、突然の雨に
  暴風に、雷に
  あなたが苛まれないために
  土深く埋めてしまわなくてはなりません
  スコップに土をすくい、 ....
  封筒を買いに行く
  各駅で二駅
  なにもない街に
  とうめいな街に



  封筒を買いに
  最近の僕らは
  いたずらに言葉をついやし
  いたずらに歩きまわ ....
  サイダー、
  君が
  つぶやいたらこぼれた
  向こうの街が
  透けてみえそうな
  蒼だ
  ここは
  いつまでも夏だ
  サイダー、
  河が
  うねりな ....
  田園は
  青空の下で完結している



  黄金の海の中
  細い糸のように老いた
  一人の農夫が稲を刈っているのを
  私が妨げようとするとき



  もう ....
  ほんの少しよごされた
  ガラスでできたコップに
  最初の朝陽がまっすぐに注ぐのを
  僕はじっと見つめている
          
          
          ....
{引用=   精液が夜に喪い、形のようなものを、
  鮮やかさに押し込めるために、闇を乳白
  にしてゆく、スローに叩かれるエンター
  キー、ポットで黙るコーヒー、まだ幼い、
  少 ....
  猫よ
  おまえは邪魔だから
  どこまでも流れていってしまえ
  そう言うと僕は
  ギャアギャアとあばれる君の飼い猫を
  便器に放りこんで
  「大」のレバーを回したのだ ....
  沈黙を
  六つの段落に区切り
  ふりがなをふりなさい



  青空をゆく白い雲と
  どこかから聴こえるピストルの音と
  くすりともしない人々
  この光景の
 ....
  寒いときはストーブのかわり
  暑いときには
  砂浜と風鈴のかわり
  あなたがいれば



  うれしいときは歌のかわり
  かなしいときには
  ぼくの心とから ....
  歩きたい
  ひとつひとつ
  言葉を知っていきたい
  赤ん坊はいつか子どもになった



  遊びたい
  唄いながら
  どこまでも駆けていきたい
  子どもはい ....
  ある日の授業で先生が言った
  宇宙を暗唱してください



  興奮したように
  エントロピーやら引力やら
  べらべらと捲くしたてた委員長は
  廊下に立たされた
 ....
  仕事をおえ
  歩む家路の安らかさ
  大切な人とともに食べる
  白米のしぜんな旨さ



  簡単に愛してよ
  行間にひそませた
  なんやかんやはいらない

 ....
乾 加津也さんの草野春心さんおすすめリスト(74)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
円柱- 草野春心自由詩6*12-2-20
冬の扉- 草野春心自由詩7*12-2-13
妊婦と赤い飛行機- 草野春心自由詩8*12-2-9
わたしのいろ- 草野春心自由詩7*12-1-30
- 草野春心自由詩11*12-1-21
もう一人の男- 草野春心自由詩9*11-12-26
- 草野春心自由詩9*11-12-23
野球場- 草野春心自由詩811-12-22
しずかなよるに- 草野春心自由詩9*11-12-20
言葉へのコラージュ- 草野春心自由詩5*11-12-19
縁側- 草野春心自由詩11*11-12-12
六月- 草野春心自由詩10*11-12-11
- 草野春心自由詩9*11-12-8
玉蜀黍- 草野春心自由詩5*11-11-18
堕胎- 草野春心自由詩14*11-11-14
キューブ60- 草野春心自由詩611-11-4
縄文土器- 草野春心自由詩911-10-31
桃色の鞄- 草野春心自由詩7*11-10-16
埋める- 草野春心自由詩9*11-10-15
封筒を買いに- 草野春心自由詩3*11-10-12
サイダー- 草野春心自由詩7*11-10-9
田園- 草野春心自由詩611-10-5
ひかりのかげ- 草野春心自由詩4*11-10-5
喪失へのコラージュ- 草野春心自由詩3*11-9-21
君の猫- 草野春心自由詩8*11-9-16
国語の試験- 草野春心自由詩5*11-7-13
かわり- 草野春心自由詩411-7-10
願い- 草野春心自由詩3*11-6-30
- 草野春心自由詩7*11-6-29
かんたんに- 草野春心自由詩6*11-6-26

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