ひかりのかげ
草野春心



  ほんの少しよごされた
  ガラスでできたコップに
  最初の朝陽がまっすぐに注ぐのを
  僕はじっと見つめている
          
          
          
  この朝はきみが目覚めた朝
  洗剤の匂いが台所から
  微風に運ばれて静かに香る
  思いは胸の奥でさざなみをたてる
  灰皿に吸殻がのこっている
  テーブルに置かれた一冊の本は
  未だかつて開かれたことも
  閉ざされたこともないように見える
  この朝は変わってゆく
  服のように光を身につけ
  影のように捨ててゆくから
  この朝は失われてゆく



  この朝はきみが目覚めた朝
  微笑みながら窓をあけ
  どこか遠くへ
  いってしまったあとの朝





自由詩 ひかりのかげ Copyright 草野春心 2011-10-05 18:14:47
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