芝生を背にして仰向けになれば
溜息をこぼしても落ちることのない
空がある
青を吸い込んだ瞳を閉じると
そこには海が広がっていた
青空の公園で
僕は一羽のカモメだった
....
朽ちた緑の壁の前に
きんいろの影がひとつ立ち
宙と土のゆらぎをつなぐ
水が流れている
手のひらから
光を呑む子のかたわらを
水は流れつづけている
無色の虹が幾すじも
....
欲しいものないかって言われても
特に無いのさ、ベイビー
気まぐれに干し芋と呟いたのだって
まぁ、欲しいけど
それほど・・・・
いや、欲しいけど
そんなもの自分で買えるしさ
買えるもので欲 ....
扉を開けると
土砂降りの雨の中に
あの頃が立っていた
あの頃とは違って見えたが
私には直感ですぐに解ったのだった
成熟した女性の姿のあの頃は
招き入れると ずぶ濡れのまま ....
何を考え無しに
不満を述べているの
ざますか
手の届くところにないことを
他人に当たるなど
呆れるざんす
ほしいものは
いつだって
手の届かないところにあるのざます
....
たんぽぽのように ふわりふわりと あなたの所に行って
あなたのくったくのない微笑を見ていたい。
そこで 芽を出し ずっとあなたの傍にいたい。
・・・でも本当はありのままのわたしが あ ....
もちろん君のいない森の中で木が
倒れようと何の音もしはしない
一生を何に捧げるでもなく終わる人の
命を絶ったところでどの神も怒りはしない
そして誰も傷つけまいとじっとしていても
....
嵐の夜
白と黒の町
{ルビ礫=つぶて}のなかの
廃屋をめぐるまわり道
螺旋階段に立つ人々
雨のなかの天使を見下ろしている
瞳から瞳へ落ちてゆく滴
水彩の ....
writeと書いてあるボタンを押したら
全部消えて真っ白になった
よく見るとwriteではなくwhiteだった
なるほどそういうことだったのか
つまり世界はそういうふうにできていて
ひと ....
価値あるものは
ウェブに流さないように
と
あなたは
哀れむように
わたしに告げた
わたしの
つむいだ言の葉は
みんな
元気でいてくれますか
それと ....
夏ではない海に
沈めてしまえるものでしょうか
私たちが紡いだ金色の思い出
もう 灰色の霧に閉ざされて
セピア色の彼方の風景
春ではない草むらに
置いていけるものでしょうか
遠くか ....
折りたたみ自転車が
折りたたまれていたのは
空いたばかりのトランクのなかで
トランクをバタムとしめると
あなたは取り乱しもせず
じぶんじしんを折りたたみ
わたしのバッグのなかにもぐりこ ....
金木犀の小花が
打ち明ける秘密を
直ちに忘れてしまってこそ空は
どこまでもひとつの
どこまでも青く澄み切った隙間です
衣服を自らほどいたわたしたち ....
(ここでは宇宙をスプと言います)
最前列右の左のスプを見た見たもの全て衛星で死亡
(ここでは宇宙をンと言います)
ンの声がロケット破壊しつくしてβ・γ線上の{ルビAir=アリア}
....
ゴージャスなイタリア製のブーツ履いて
電車に乗り遅れまいと走ったときに
ヒールが折れて
あたし
電車のがす
100足の靴の中
磨かれ待ちの靴が20足ほど
ヒールの修理待ち ....
太った男の人が
日向で陽の光を浴びて
まだ少しずつ
太っている
やがて坂道経由の犬がやって来て
すべてを食べてしまった
+
お座り、が得意な子でした
お手、もしたし
....
季節にはまるで関係のない温度に
振り回されていた僕は
全てを吐き出せる場所を
作ることにした
それは近所のスーパー「オオゼキ」の店先に
特価980円で売っていた
....
いくつも詩を読んでくうちに
詩なんてくそくらえと思う
飾っちゃってさ
君をもっと知るために君の陰部を見せてくれないか
君は呆れ身構えるが
そうしないと僕には君が見えないんだ
....
特に何もない。今日僕があなたに語るべきことは特に何もない。あ
なたに語るべきことが何もなくてとても残念だ。明日また語るべき
ことがあればそれは残念ではなくなるが、あなたがいったいいつど ....
涙は
流れることを許されず
瞳にとどまっていた
雨が
かわりに泣いてくれたので
辛うじてプライドを保っている
物語は
最終章を目の前にして
頁を閉じられた
栞を
....
目に見えない時を読めるようになったのは
あのひとと次の約束をするためだった
等間隔にきざまれた目もりを
瞬間の目印にして
大きな流れの中でも
わたしたちがまた、手をとりあえるよう ....
僕はスプートニク2号
地球初
気密室を搭載した
宇宙船
まもなく
僕は
他の兄弟と同じように
宇宙の塵となる
鉄の塊
その日
僕の部屋に来たのは
いつ ....
木がねむると
木のなかに
ほんとうの木がうまれて
風にふれようとする
風がねむると
風のなかに
ほんとうの風がうまれて
空にとどこうとする
空がねむると
空のなかに
ほんと ....
朝日の広さがだらだら緩んで
だらだら、昼まで届いて
ぼんやり正午をふやかしたアルコール
その向こう側を透かしたら既にぼんやり
夜、のような
そこが既に、夜なら
....
命の重さを量る機械を発明した科学者は
池袋毒キノコ事件で有名な例のカルト団体の信者によって拉致され
19日後に青森県の山奥で遺体で発見された
遺体には鋭利な突起物で刺された痕が合計69箇所あり
....
線路脇に建つ家に生まれて
ずいぶんと長い間 そこで暮らしたせいか
今でも 5分おきに
からだを揺らしてしまう
そうやって揺れているうちに
いつしか わたしは
窓ガラスの
3メート ....
きりすとが赤くきれいに咲いている
きりすとが青々と茂っている
一本の樹齢二千年の木のように
立っているきりすとは
大きな丸い世界を{ルビ蒼=あお}く包む空にとけゆき
無限の宇宙へと広がりゆく ....
空があんまりひくいので
きりんのくびは
つい空から突き出してしまった
そして見たくないものを
見てしまった
あああんなにうつくしいものを見てしまったら
もうぼくは
なにをみてもう ....
恵みは 希望を膨らませ
たわわに 蓄えられて行く
根ざす 大地は暖かく
不自由さに 逆らうことも無く静かだ
希望は満ちながら 腕から零れ落ちて
一面に 撒き散らされる
帰ること ....
いつのまにか
あなたがいなくなることが
いつのまにか
怖くなっていて
それは
幾日もの
あなたと私の
笑顔の証
とても不思議なことに
朝はいつも訪れる
目が覚めると
朝は ....
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