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屈託の無い笑顔で
光をたぐり寄せた
他の誰でもなく
君がそこに立っていた
消える直前になって
耳元でささやいた言葉
心の引き出しの中
四つ折りにして仕舞ったまま
大人になるって ....
髪にふれる
みしらぬ風の 秋
始まりは、いつものたおやかに
あるかなしかの ボレロのよう
音符さえもなぞれぬ 穏やかな
休止符だらけの
ゆるやかに ながれくる空
....
悲しいと思うから
悲しいだけだ
誰かが遠くでそう囁いた
鼻の奥がツーンとして
目の周りがやけどしたみたいに
熱かった
…
何も知らなかった頃のあたしは
プールで ....
“熱が冷めた”らしい。
きっと、時の流れが君の心に入り込んで、少しずつ熱を奪っていった結果なのだろう。
幸福や悲しみ、怒り。
時間には、様々な熱を冷ます効果があるって聞いた事がある。
....
{引用=うずくまる。
からだの表面積をちいさくして
世の中の37%を遮断する。
わたしのまるいふくらみと
わたしのしろいふとももをくっつけて
ひとつ。にすると
やわらかな鼓動を感じ ....
あなたによく似たひとだった
人違いと戸惑うわたしの顔を覗き込み
どうかしたのと気遣ってくれた
これを落としたひとをずっと探しているのと
あなたの落しものを目の前に差し出した
その ....
ろくでなしの父親が
息子が来年
六歳になる頃には
幼稚園に行かせてやると
飲みながら大ぼらをふいて
株価を上げようとしている
職場では
仕事をどんなにこなしても
それが ....
風来は たいふうの
すきほうだいに 人をもてあそぶ
時雨のあらがいようもない
もうまわりは すっかりうす暗がりで、
背にする重たい気圧 に 青ざめてしまうほどに
息をひそめ ....
ヒトが生きてる理由など
生まれながらにしては、ないよ
ただ、最愛の命から
偶然授かったこと以外は。
野良犬が何の理由をもって
アスファルトの上、餌探す?
庭の蟻は何の理由で
行列をつ ....
偶然見付けた奇跡を
大事にとっておいたけれど
奇跡は重ねれば薄くなるもの
そうして消えるのにはたいして
時間はかからなかった
森羅万象とは全てのことを言うらしい
理 ....
駅の東口を出る、二、三歩の、携帯のメロディ
ごめん、やっぱり会議で遅くなる。
待ちぼうけに、溜息が渇いた
不似合いな街の、バックグラウンド、どこか鮮やか
歩きついた香水店の、誘惑の一滴
....
濁った瞳で
君を見ていた。
損と得を天秤にかけて
−+で合計だして
得が多いのなら
その手をとろう。
損が多ければ
さよならしよう。
数字が溢れているこの世界。 ....
夏の夕風が さやかに
吹きぬけるような
誰にも優しい きみだから
生きる重さを手に さげて
心をいためて ばかりいる
会えないときは、なおさらに
名もない星のような 孤独や寂 ....
命がひとつあった
命なんていらないと
思ったときもあった
命がふたつあった
どちらかの命が
残ればいいと
思った恋もあった
命がみっつになった
みっつすべて
残ら ....
季節外れの神社に
十歳の僕と親父が歩いてゆく
親父は何もしゃべらない
僕も黙ってついて行く
参道の階段には銀杏の葉
黄色い黄色い石の道
段々を上って一息入れる
親父の肺は一つしかない。
....
投げ捨てるように
陽がしずむ
衝動さながらに性急な 紅く去る欣求
栓をときはなち、器に受けとめれば 波は
ぞめき うねりとなり
すべての陽と海の 混交体は、
鮮 ....
無知な人たち、と
父の生家に唾を吐き
母が消えた
時の区分は夏、そして
秋にも依然、消えていた
秋の再来
消えている母
九月は母の誕生月
父はきちんと知っていた
本日、九月の二十 ....
おーい、と言った
おーい、と返ってきた
そっちはどんなあんばいですかあ、
と聞いたら
そっちはどんなあんばいだあ、
と聞かれた
それじゃ、意味ないです
お義父さん ....
光来の海に
想うまま 焼けた砂を飛ばせば
来歴は誘われ
まばゆい白波が綾なす 潮騒の天覧模様
小さな島の
漁師の若者と海女の娘の
恋物語
しのつく雨がたたく嵐の午后は、導きの
....
私がふたごだったとき
ずっと森で暮らしてた
ふたりおそろいの服を着て
毎晩同じベッドで夢を貪りあった
ふたり一緒にいること
それが当たり前の世界だった
私がふたごだったとき
世界はひ ....
あんなに耳障りだった蝉の声も
虫眼鏡で集めたみたいな痛い陽射しも
まるで色あせ始めた遠い物語
なだらかな坂道を自転車でおりると
向かい風がほんのわずかの後れ毛を揺らす
時折小石が顔を ....
昔あなたが
歌ってくれた
丸い月に
響く歌は
僕の心を揺らしている
懐かしさの陰で
小さな背中が
泣いている
作り笑いの
裏側で
指折り数えた夢
いくつ諦めてきたの
叶 ....
この腕に
守れるものなど少なくて
そのくせなにかを
守ってみたくて
だから
たとえば
波打ち際で
きれいな貝殻を
探してる
きみは
きれいな貝殻を
よろこぶだろうから ....
そそくさと去り行く夏の記憶を確かめようと
深緑色に澱むお堀ばたを訪れてみた
色とりどりのウエアでストレッチに余念の無い肢体は眩しく
人恋しさを見透かされてしまうようで
遠慮がちにちょっと離 ....
猫が伸びしてあくびする。
それを見ていた子猫も
ふぁ〜あ
子猫のあくびに
母猫
ふぁ〜あ
子猫が虫を追いかける。
前足交互に
しゃぁーっ
しゃぁーっ
そのあと、子猫は肉 ....
・
幼いころ
妹はお風呂が嫌いで
兄は爪を切られるのが嫌いで
わたしは歯を磨くのが嫌いだった
だからそのころのわたしたち三兄弟ときたら
妹は髪から極彩色のきのこを生やし
わたしはのどの奥 ....
{引用=
盆がすぎ、まだ青々と立つ稲の 鈴花が
まだ咲かぬのかと歯軋りする歯は黄色く毀れ
甘みが乗らなかった梨の実をもぎ
浅く掘った穴に震える足で踏みつけていく
「来年はがんばれよ」 と ....
なにか物足りない
一生懸命な女が好きだ
そとに出さなければ
かくし通せるせつない気持ち
でもこれは仕事だから
公共性のないことは言えない
通せない
悲しいとき
貫くべき ....
水面下で寝息をたてるわたしに
おはようのあいさつは
いつもキスだった
大切はいつも
抱えていたつもりで
放り投げていたかもしれない
川のあたりできれいな石を探すようには
見つから ....
いくつもの、
接がれない
夕刻のだいだい色を
ポケットにしまおうとして
持ちかえれない
そんな夜は暗闇に目を凝らした
この病棟の窓から見える夜景は
いつもと変わらない
....
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