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薄紫色の大気はひんやりと冴え渡ってそこにあった
南天の赤がこじんまりと眼の端に映るそんな朝だ
生きることはそうわるくもないさときどき意味のとり方を間違えるだけなんだ
そうみんな生のかけらを交 ....
僕は夢見る人が好きだ 当然僕もその種族だろう
ただ夢を見ながらも 自分と正対できたらいいと思っている
夢を見る自分を受け入れ それでも夢を夢となずける強さがあれば
毎晩暑苦しくて 真 ....
哀しい村を過ぎて丘を下る 教会の鐘が鳴る午後 マリアは涙を流す
礼拝堂は空虚で まるで僕の心みたいに 遠近法を失っている
君の庭園はとても静かだ 静謐という名の永遠
遥か高みを鳥が横 ....
小魚の様に無心に生きる 花びらの様に綻びる 風の様に巡り 夏の様に燃えさかる
春の様に流れ 雪の様に舞う 歴史の様に積み重なり 光の様に消滅するのだ
その姿は見えない 誰にもさわれない 湧き上 ....
風が身の幅を寄せて悲しみを吹き渡る
蒼白な月はちょっと捻じれて孤独をうたう
僕たちは崖っぷちを降りたらしばらく水平を保って喀血する
航路を失った船は喪失を柔らかく受け止めて輝き
....
銀月夜の人魚
ほろほろとほろほろと波打ち際で泣いていた 人魚は何が哀しくて 月夜の浜でひそやかに
恋の痛みもありましょう 生きる辛さもありましょう こっそり夜風に伝えましょう
誰に涙 ....
日曜の朝 僕は生きていた 相変わらず
美術館に行こう そう思った とても縁遠い生活だ
生活もできていないかもしれない
僕のなかには整理されきちんとしたものなんて何も無かった 歴史さえも
ア ....
真っ暗で何も見えないが もう泣かないよ もう子供じゃないさ
不安は日々成長して何かを損ねる ただそれと闘う 何が僕を存立させているかは僕が決めること
遺伝子だって取り替えっこしてるんだ 笑って見て ....
僕はスカイパイロット君の空を翔びたいんだだけど悪天候で視界ゼロさ
空の星を取りに来たわけじゃないんだ君の心を探してるだけなんだからね
僕はサン=テグジュペリじゃあないんだ
誰も見えない暗闇の ....
新緑がこころに刺さる季節は君と手を繋いで歩きたい
野辺の花を愛でながら世界をいとしく思うことだろう
背に負った荷物も軽くはないがそんなものこの五月にくらべればなんでもないんだ
大地からの息吹 ....
君と同じ空を見上げたかったのだ
お雛様みたいに仲良くちんまりと並んでいるんだよ
桃の花だって咲いているし重箱には煮物バスケットにはサンドイッチ
おまけにスパークリングワインなんぞも冷 ....
窓を開けると校長先生が欠伸をしていた
校庭ではポニーテールが僕に微笑んだ
片えくぼを連れて
まだ風は冷たかったが沢山の蕾が輝いていた
遠くの山では雪も消えはじめ
柔らかな表情へと ....
星は僕たちに距離を教える
月はときどき涙の処理のしかたなんかをけっこう親切に教えてくれる
隣の親父は怒鳴ってばかりで僕も親父なのでちょっと哀しいが
遠く切ないもの
六本木ヒ ....
ひとは知らずに響きをのこしてゆく
希望の響きばかりではないが
きみが生きた証だと信じている
それは言葉の流星群となって
僕の夜に降り注ぐのだ
そして花火のように弾けて燃えつき去っ ....
路地裏の朝顔が綺麗なのは
それに丹精を込めた人の息遣いや想いを
一緒に重ねてしまうから
そういった情緒を
たっぷり吸い込んだ花だから
アパートの洗濯物なんかにそれぞれの家族構成やら
....
夜に浮かぶ幻想群
いつも夜の湾岸線を走る度に思うのだ
川崎と木更津を結ぶアクアラインも然りだが
陸上の建造物よりも海上の光のなかに浮かびあがった巨大建造物は
何故か深く心を打つ
....
大好きな人よりも本当は
お弁当の方が好き
はっきり言ってももちろん愛は消えないさ
僕の方のね
でもさ愛がはっきり確かめられるんだ
たとえ見栄え悪くてもね
おかずはいいさはっきり ....
人気の無い埠頭から望んだ街はただ灯ばかりが無機の光を放ち
まるで人間の営みとは無関係な顔をしているみたいで
かすかな海の匂いを抱いてそれでもふと
人を遠い空間にいざなって行く
僕に ....
深紅の薔薇を投げた夜
いくつもの吐息をかさねていた
僕達の想いには名前がなかった
そんなもてあました悲しみが
僕達は好きだった
いくつもの季節を共有し
違和を閉じ込めた小箱を持って ....
僕らはやって来た
山脈を望む高台で自身の未来を仰ぐべく
正中する太陽の指し示す影を追って
南の肥沃な低地には生命の修羅があって
過剰な欲望が溢れていた
充足の幻影が従属であること
....
遠い海を思う日
すべての手足が色あせて見えた
博物館に展示された金飾の棺のように
自我という幻が何かを閉じ込めているようだ
風化させるままに人生を問えば
その答えもまたかさこそと音をたて ....
なんでもない詩人たちがけっこう好きなのです
ごく私的でもよいのです
ときに詩的でさえなくとも
ぼくのちっぽけな世界をあたためてくれる
ひとひらの言葉たちがたぶん
ぼくがなんとなくたいせつ ....
浅い秋の山麓にはまだ夏が僅かに匂いを留めている
霊園のなか
木漏れ日に似て
かすかな静謐の羽音を伝えるもの
誰かの魂の代償としてここにやすむメタモルフォーゼの
しるし
霊園の空は高く
夏をとむら ....
発酵と腐敗は兄弟で
人間生活に有用なものは発酵
有害な場合を腐敗というらしい
母の遺産のふるーい缶詰がある日でてきた
台所のすみで静かに時を過ごして
僕と対面したわけだ
すでに缶は ....
ありあわせのもので生きてゆく
冷蔵庫のなかにはあるいはいえのなかには
備蓄したもののない
こってりとした愛とか
ささくれだった笑いとか
スパイスをきかしたつもりの人造サラダ
気 ....
その夜そらは光の雨で満たされて
彼方の丘の上にまたひとつ星が突き刺さり
まるで堕ちてゆく天使のようにうたいながら
ことばのかけらのように降り続けるのです
こえにならない声がきこえて
胸を ....