すべてのおすすめ
野球選手から空を奪うなと
誰か言ったとか言わないとか
日本じゃとっくに権利もない
雨風しのげばいいみたい
そんなぜいたくいうなって
日本人に生まれてきたんだろ
それ以上もう ....
たくさんの
思い出に囲まれた
箱の中で
春まであと少しと
必要なものを丁寧に
包んでいく
持てないからと
選ぶしかない別れにも
振舞いだけは潔く
過去も未来も
考え ....
キリンのように
長い首だったので
保育園の先生を
キリン先生と呼んでいた
心の中でも同じように
お友だちはみな
そう思っていたらしくて
ある日お友だちの誰かが
キリン先生 ....
トクメイで詩を書いて人を脅すなんて
最低も最低 愚の骨頂 犬の骨だ
掲示板にトクメイを遣うのなら分かるさ
しかし詩はその人間の真髄を
もろに表わすものだぜ
それをトクメイで書くなんて ....
素晴らしい気晴らしに、いつ果てるとも知れぬ夢
悔いる人の波の中、寄せては返す太眉毛(ふとまゆげ)、
へつらうべきは、その向こう、
あらがうべきは、まだ向こう、
カラスは啼いて、鳥になる。
....
裏庭に透明の象がいる
ばあちゃんはそれを知っている
他は誰も信じてくれない
夜、布団に身体を任せて
僕は透明になる
(つまり僕は僕を抜け出すんだ)
そして象に会いに行く
暗闇の中 ....
例えば
絡まった糸を
丁寧にほどいていくように
例えば
築かれた壁を
一つ一つ壊していくように
話して、泣いて、理解して
受け止めて、笑って
....
わが家にも念願の街が出来た
これからは部屋の名前を
町名で呼ばなければならない
陽だまりヶ丘一丁目
そこに僕がいる
居間の窓際の辺りだ
二丁目から三丁目
キッチンが見える街まで ....
まっ白に
なりたくて
涙で
青くて
なれなくて
近づくことさえも
できなくて
ただ
ただ
溢れて
あの花の
わらった顔
思い ....
くたびれた足を引きずって
いつもの夜道を帰ってきたら
祖母の部屋の窓はまっ暗で
もう明かりの灯らぬことに
今更ながら気がついた
玄関のドアを開いて
階段を上がり入った部屋の ....
声は届かず、
空白による想像
繰り返し重ねてみる
透過はやがて
いちいちきゅう、
の信号を打ち上げ
覚束無い足取りで
慣性の法則に辿り着く
_
水面下で白 ....
春が訪れた
ある晩
列車に乗って
終着駅にたどり着くと
妹はまだ
待ってくれていた
春夏秋冬
それからもうひとつの
季節があった
かつてひとつの
家族でいられた季節
....
ひとの気配に気付き上体を起こしてみると
逆光に髪の長いおんなの姿を認めた
それがあのひとの妻美佐子さんとの最初の出逢いだった
彼女について何かとあのひとから聞かされていたのと
私に用事があ ....
わいが 浜に春が
きたど ちゅうで
わいが 浜に春が
きたど ちゅうで
おいも 浜に行っきたど
おいも 浜に行っきたど
....
その夜
私は、私を
不幸せだと思いました
死にたい、と
思ったその瞬間に
あなた達の顔が浮かんで
....
寒い季節の匂いがした
去年の寒い季節の記憶がよみがえった
引きこもってたんだよ私
それをジーナさんが一生懸命外に出そうとしてくれてたの
経堂に散 ....
苦しかった
「大丈夫?」なんて聞かないでくれよ
なんていえばいいんだよ
「大丈夫じゃないよ」
なんていえる勇気があるとでも思っているのか
....
気が付けば ボクの尻尾が切られてた
可愛いのにな、ゆらゆら揺れて。
草原を自由気ままに走ればいいの
緑の匂い、土の中を想像しながら
だって
きみと離れてしまえば
流 ....
東京で傘を買った
気温が高くて雪にはならなかったから
雨なんて何ヵ月ぶりだろうと思いながら
コンビニで傘を買った
とことん後悔してへこんだ日だった
少し早めの時間の空港で電話をかけた
....
なんでもはなせるといいながら
なんにもはなせていなかった
ふたりは
おたがいはなすことなく
おたがいはなしてしまった
それだけの
はなし
兄さんが帰ってきた
兄さんは
少し自信のなさそうな
顔をしていたけれど
兄さんの声は
あの頃と変わらない
兄さんのままで
兄さんがいないあいだ
僕がどれだけ不良になって
自 ....
男は声をはりあげる
もう何も言わせないようにと
しかし女は声を潜める
男に聴きとってもらえるようにと
ささやかな願いをこめて
「もう時は変わっているのよ」
その言葉は自動販売機で手軽に買えた
同じような味が
温かさと名前を変えて
いつも私の方へと急いで駈けてくる
わたしを
わたしのように生かし続けてい ....
私はお洋服屋さん
お洋服をたたんでいるときがいちばんしあわせ
お洋服一枚一枚と
今日のできごとや
ファッションについてのこと
いろんなことを語り合えるから
お洋服をたたんでいるときがい ....
今ここにある危機を
止める術はないのか
久しぶりに仙台の娘の家を
夫婦で尋ねる
美しい顔が教育する母になって
娘の顔は冷たく尖っている
三十年前に
娘が生まれたころ
妻は働いて ....
ぱしゃぱしゃと
雨が降っています
じゃぶじゃぶと
何か洗いましょうか
地球は
自分で自分に沈むことさえ出来る
降るものが詩なら
詩浸しになることさえも
スロウ硝子はまだ届き ....
ぐらんぐら、らん
昔作り上げた願望は
粗大ゴミとなった
焼却炉へ
おもむろに葬られ
弔いも、なく
ぱ、ら、ぱら、
黒煙と化していく
空へ立ち上りながら
昭和を醸し出 ....
たかのり君
と呼んでしまった
生姜焼き定食のことを
もちろん
たかのり君が
生姜焼き定食であるはずはなく
けれども
一度そう呼んでしまえば
そのようにも思えてきて
こんがり ....
東京に行ったらば
もっと自由になれるのかと思っていたらば
まずはペニスがないことにはどうにもならなかった
どこへ行っても
おじさんの横ににっこり笑って座る役目しかゆるされなくて
わたしは ....
━1
昼寝するあなたの枕となるような
陽射し遮る日傘となるような
本を作れたら良いと願うのです
ボロボロに擦り切れたその表紙には手垢がこびりつき、
セピアに色褪せた付箋は、いつも同じページに挟 ....
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