私は
知らない
あなたのいない世界
私が生まれたときから
あなたは
ここにいて
あの日
60億人いる
世界の中で
あなたに出会った
これからも
知りたくない
....
病院の朝食のバン
焼いてないし
おいしくもないけれど
このパンを
食べるしかない
選択の余地など
ない
好きなひとに
好きって言える
余地もない
独り
想いを募ら ....
コトバでは
言いきれない
気持ち
また夕暮れが
きた
今日も
あなたに
会えない
会えても
どうにもならないことくらい
わかっているのに
秋の{ルビ夜=よ}の 月のライトの 帰り道
霧雨が
降り続いて
やわらかな
ミルクいろに
包まれる
忘れてしまおう
どうせ幻なら
あのことも
このことも
あのひとのことさえ
きっと
幻だったのだから
みんなみんな
忘れてしまって
....
ちらちら
輝く
確かな夜景
どこまでも続いて
どこまでも
どこまでも
明かりのない
夜の道標
あの灯の下には
人々が暮らしていて
切ない
歩き出すなら
夜がいい
どこまでも
どこまでも
き ....
観察室から
病室に戻った日
夕方
鉛色の空に
虹が出た
儚く
でも色鮮やかで
ガラスのような
こんなに
美しいものが
あるなんて
消えるまで
見ていた
鉛色の空に
滲んでいく
虹を
わたし ....
偶然
この森の小道を
あなたと2回通ったね
真夏
知らない風が吹いて
わたしのワンピースの裾を揺らした
でも
あなたは
あなたのままで
この想いは
きっと
いつまでも ....
あかいあかいいちご味
提灯に照らされあかいのか
キミと手を繋いでいるからなのか
みどりにすきとおるめろん味
夏の海にも似たこころ
私たちはまだあおいあおい
きいろくひかるれもん味
....
眠れなかった寒い朝には
あったかいココアなんか
飲みたいな
ふたり
ひっついて
離れないで
パジャマ着たままで
そろそろ出かける時間だなんていいながら
はやく着替えなきゃなんて ....
病院内で知り合った
女の子が
儚くなった
茶色い長い髪を
くるくるとカールさせて
フリルやレースの
かわいい洋服を着て
いつも微笑を湛えていた
その彼女が
もうい ....
星たちを
夢のすき間に
忍ばせて
明くる日の朝
波に放った
たぶん
わたしは退院したら
ポッケに手を突っ込んで
口笛吹いて
どこまでも歩いていくだろう
ポッケは空っぽ
だって
もう怖いものは
なんにもないんだもの
どこまで ....
ぽつぽつと
雨のように
私の体に入りこんでくる液体
ひと雫
ひと雫
数えるのにも
飽きてしまった
ゆっくり過ぎていく時間
1日
1日と
数えるのも
もう
飽きてしまった
明日は来なくても
....
植物の哲学が
首を傾げる午後
古い印が刻まれた
かつての貝殻を
家にして暮らす
国のひとたちが
二通りあった
終わりに海の底で
少しずれながら
響いている
静かな鐘の音を
平行線 ....
小さな
天窓から
刺す光
この光が
こころを
蘇えらせてくれるのか
この
切り取られた空が
夕暮れに浮かぶ
大きなお月さま
きっと
あのお月さまは
夜中になれば
やさしい灯で
この街を
包んでくれる
やさしい灯が
病室にも
射し込むだろう
たぶん
私の眠りを
見守るように
何十年も
他人の話を
盗み聞きしてきたソファに
座ってみた
革はただ
つやつやして
知らん顔して
深く深く
うけいれてくれた
でも
今日は
盗み聞きできないよ
だってわたし
独りで座ってる ....
さみしい犬が
鳴いている
夜が忘れられて
やかんが沸く
鯨は吠える
イヌイットの
ソリに引かれて
作られては
壊される
道が未知となり
わかっている
朝帰り ....
諦めと
手をつないだ
諦めはやさしく
とても甘美で
でも
まだ
溺れきれないわたしは
悪あがき
こころに
貼るものが欲しい
まだ
瘡蓋さえ
できてないから
時々思う
ふと胸が
苦しくなる時
君も同じ様に
苦しいんだろうか?
時々思う
何もないのに
流れる涙は
君が流した
涙なのか?
不思議な繋がり
君となら温かい
雨粒が
なみだみたいだなんて
陳腐ね
とても
雨滴も
落ちてしまえば
ただの雨水
なみだだって
たぶん
そっか
もう
ダイエットなんて
しなくてもいいんだ
ぶくぶくに太っちゃっても
いい化粧品を買わなくてもいいんだ
きれいになるように
肌の手入れをしなくても
おしゃれもしなく ....
いつか
飛びたてる日が
くるのかなあ
今は
枝が覆って
少ししか見えない
青空へ
何もかも脱ぎ捨てて
自由な光へと
老朽化の進んだ体育館は
二階に観客席が付いていて
死んだ蛾や蝉がたくさん落ちていた
わたしは
つま先の赤いうわばきで
それらの死骸を踏み砕き
空へ近づこうとするかのように
一人でそこへの ....
永遠の少年よ
強くあれ
ただ強くあれ
赤く染まる風景に負けぬよう
お盆に実家に帰ったら
なつかしい扇風機が居間にあった
こどもの頃に足でスイッチを入れたり切ったりして
かなり邪険にしていた扇風機が
とてもモダンで今っぽく
おしゃれな感じに見えた
お墓 ....
カーテンが
レールをすべる速度で
ひかりは生まれ
わたしの部屋に
朝をさしこむ
レースを通過した
木漏れ日から
光をひとつ選び
手に入れることなど
できない
あやふやな瞬間が
....
ゆめのなかでさえ
あのひとは後ろ姿で
いつだって
後ろ姿で
ゆめのなかでさえ
好きとはいえなかった
あのひとの抱きしめたぬいぐるみを
大切に抱きしめて
ぬる ....
ひと夏のあいだ
あおぎ続けていた団扇
骨だけになって
白いプラスティック
手に馴染んできた
縦じまの持つところ
右手を呼んでいる
いつから皮が剥がれ落ちたのか
水かきの無い手のひら ....
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