ターン
折り返し地点は
とうに過ぎていて
見上げれば
ゴールはそのまま
始まりの場所
そうか
そうなんだね
恋というマラソンは
そのまま
スタートラインに倒れこむこと
....
詩作品がうまれて、詩集という形になるまでには様々な出来事がある。大部分は詩集を手にする読者には分からない。でも時々それらのエピソードの一部が栞やあとがきに書いてあって読者の知るところとなることがある ....
恋がまだ私に生きていたころ
私は
夏の校舎を一周する
鼓笛隊のパレードだった
恋がまだ私に生きていたころ
私は
夕暮れを味方につけた
見えない星だった
恋がまだ ....
「具体的な症状をおしえてくれますか?」 「彼があたしを苗字で呼ぶの」
腕枕ナチュラル導入委員会 寝返り30回 もう朝だし
振り向かせたいから 『か ....
あなたは
いつも楽しそうだけど
時々
みんなから離れて
ぽつんと一人で
カメラをいじっているよ
わたしが寄っていったら
笑って
たまには
わたしの写真を
撮ってくれるから
思 ....
あなた
あなたは夕焼けの罪で
無期限に
私の記憶から
逃げ出すことは出来ません
あなた
私の胸に
秘密を差し入れた
私はあの日どうかしていた
いえ
それはあなたもきっとそう
....
与え合うものは痛みと欲の痕。左手どうし繋がれていた
口付けて錆びつくほどに探るのは求め合うたび変わる鍵穴
枷を引く。ひとつのふりをしたほうが
軽くなるなら脱げるうすぎ ....
指は
君の小さな生き物だった
どこか
遠い異国の調べみたいに
時おり
弾むように歌ってた
君が僕の指を食む
君が
少し子供にかえる
遠いね、
とだ ....
あなたと その周辺を分解し
組み立てなおし 恒星のことばで
したためて 郵便受けに
ほうりこんだが 返事がない
いや たぶん絶対に こない
ぼう、と
汽笛が低く鳴いて
遊覧船が桟橋を発つ
湖の真ん中
ボートにたたずむ私たちを
避けるように右へと進み
エンジン音が湖畔に響く
よかったね
あのまま
まっすぐ来たならオ ....
この連作「そろもん」は、五行というフォルムそのものがテーマでした。大局的には、それ自体が現代詩的構文のアンチテーゼとして機能することを目論んだと、とりあえず言っておきます。でも内実は、きわめて個人的な ....
太陽に撃たれてしまった今日という夏が私を浄化していく
反乱の白い日傘を青に塗りわたしと空が同化する夏
「その花を頂きます」と来る予告、たぶん夏には盗まれている
風鈴の ....
明日も生きていてね
と君は言う
たとえ明後日生き返るにしても
明日君が死んでしまったら
やはりそれは悲しいから
明日も生きていてね
と君は言う
なにかをかなしがるような眼で
ど ....
世の中って恋愛話が多いですよ、ねー。
あれですよね、恋愛というのは、合法ドラッグ・・・恋愛中というのは、交尾を促すために脳内モルヒネがばんばん出ているらしく、そのせいで「どこがいいのー?」と言うよう ....
八月が終わらなければいいと
願っていた
そのときわたしは
小学五年生で
朝顔を上手に育てることが出来なかった
そして
支柱にぴよぴよと巻き付いた
枯れた朝顔に
まだ毎朝ぼんやりと水 ....
真夜中。わたしはシンクの前に立つ。わたしの右手にはナイフ。左手には、先輩からいただいた、いかにも高級そうな白桃。
何をかくそう、わたしは白桃が大好きである。薄い皮を剥いだあとの、あのけば立った白 ....
すごく手の小さな人だった
少しささくれていて
手比べをすると僕の第二関節ぐらいしかなかった
職人の手だった
大きな手なんて意味がないよ
とか言われて
おれの手だとね、細かい作 ....
◆詩集は目につかない?
あたしなんざこの年になるまでほとんど詩なんぞ読んだことはなかったわけですが、その理由の最たるものは、「詩集は簡単には手に入らない」これにつきたように思います。
まず書 ....
どこかの古墳を解体して
壁画を科学することを
別に
否定はしないけど
私には興味がない
どこかのコロッケが
牛肉だろうとどうだろうと
それは
当たり前のこと
預けたお金が
....
凶と出よ地上百メートルの長箱
指紋消して他人の庭を跳ね歩く
港の突端あるいは渦巻くプランクトン
農夫立つ雨後の田舎に真っ黒に
近眼にクリーム自ずから尖る
シャツの下に死ぬ ....
先日、横浜詩人会が主催するイベントに行ってきた。JR関内駅から歩いて数分、横浜スタジアムの近くにあるZAIMという古いビルの中のミニシアターで行なわれたものだ。第一部は横浜詩人会会員によるポエトリー ....
大切に思うほど
遠ざかるのはなぜだろう
お弁当のウインナー
最後まで 見ていた
カラダよりキス
キスよりもことば
ことばで
私たちはつながっていく
遠足の日
ずんずん ....
すべての作品は、過去。
自分は感情という生き物が好きだ。でも、どんな感情も結局は過去で、文字にした瞬間、それはもう古代エジプトの遺跡と同列の過去の遺物。
あるいは。表出ということ自体がなん ....
受け取る形の器に手紙などよそう
近年から銀を塗られた鹿が来る
顔から火が出る者は仰向け 二十時の火
森の一本の木を凍らせ水場のグラフ
宇宙というカテゴリーに血で結ばれ挙式
....
もう かわをむくのが
いやになった という
かんかくに ようやく
たどりついて すこし
たまねぎが わかった
以前、「しゅき」っていう作品を書いたことがある。
* * * *
「しゅき」
あなたの胸に頬をあずけ
うっとりと夢見心地で
すき、って言おうとしたん ....
おそらく男の多くが女の下着姿には興味がある。それが行きすぎて犯罪に手を染める人もいるほど。盗撮、下着泥棒などなど。罪を犯す人は典型的だけれど、男の多くが相手の女の事情をあまり知らない。私も含めて。
....
寒い、と言うと
あなたはわたしの肩に
そっと
うなぎをかけてくれた
ぬるぬるして
うなぎも鳴くのだと
初めて知った
うなぎのさばき方を
教わったのも初めて
大人の恋は
....
裁くことは可能だ
だが公平ではない
愛することは可能だ
だが公平ではない
博愛主義とは何だ
ひたすらに
わけあうことか
私の精神は
無限ではない
私は
命のベクトルを
....
肩に通う筋肉遠く山奥から
道ひかる部落へ無色の板を手に
感染経路青く塗る母国語を捨てて
電線にティッシュ弾かれ交わる影
へこむ石に頭を寄せては返すひと
電球吊った天井高く ....
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