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其の純白が
花嫁衣装の様だった
『純白般若』
祖母は
小さい頃に
骨を食べたという
焼け野原になった当時
ろくな薬も無いなか
人間の骨は万病の薬だ
という噂が ....
彼は鉛色の鞄
白いカンパスに
12色のアクリル絵の具
一本の筆で
いつも
橋の上で絵を描いていた
『葬式写真描き』
ソコは私の昼寝スポットで
よく鉢合わせをした
たか ....
我が家にはじいやがいる
じいやの名前は長谷川という
『長谷川のこと』
長谷川は今年で82になる
大正の殆ど終わりに産まれて
人生の殆どは昭和に飲み込まれ
青春の殆どを戦争に ....
献血に行ったら
貴方の血は夕焼けなので
輸血用には使えません
と
断られたことがある
16歳の頃の話だ
『血液奇談』
今は何の因果か
私は血液職員として献血車に乗り ....
{引用=リトル・ミスに出会った}
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{引用=彼 ....
それでも
女の人が
涙ごとに流す{ルビ睫毛=まつげ}は
蝶々になるのですよ
『睫毛蝶々』
祖母の形見の化粧箱は
真っ赤な朱友禅に金糸の菊
中には小さい鏡もはめ ....
商店街の呉服屋には
座敷わらしが出るんだ
『呉服屋の座敷わらし』
何年も前
近所の商店街は
七夕が近づくと
ささやかながら華やいでいた
電燈の高い所に
白と桃色 ....
【K】キスで道連れだった
初めてのキスは初恋の君
風味はアーモンドで
香ばしく甘酸っぱく
それでいて涙がでるほど切なかった
あの香りはムースポッキーのせいだと記憶してるけど
本当はどうだっ ....
目の中に星屑がはいりました
ゴロゴロしてとても痛いのですが
暗闇の中でも
世界は輝いて見える様になりました
口の中に空が落ちてきました
舌の上で確かめた其の味覚が
あまりにも蒼いも ....
【睫毛の先】
もう
恋なんぞしない
と思って泣き続けたら
はらはらと
睫毛が残らず抜けてしまった
恋は
睫毛の先に止まるという
以来恋をしたことは無い
【 ....
写真を撮り始めたのは
去年の二月のことだ
私の仕事は
月の表面を映し
氷があるかどうか確かめること
私は
しがない月探査機だ
『優秀の湖に眠る』
物心がつい ....
『未亡人』
という呼ばれ方を嫌った叔母は
高飛車な懐古主義のロマンチストで
まだ幼かった私に
{ルビ刀自=とじ}
と呼ぶように教え込んだ
『{ルビ刀自=とじ}の刃』
....
6歳の頃
初めてりんご飴を買ってもらった
食べるまで
りんご飴は
ケン玉の赤玉でできている と思ってたので
甘くて柔らかいから吃驚した
7歳の頃
初めて金魚すくいに成功した
ふ ....
初めて指輪を贈った人は
彼女ではなくて
母だった
『ビューティフル・リング』
僕は7歳で
母に連れられて
縁日の夜店を廻っていた
ふと
屋台に並んだ
ガラス玉の指 ....
夏休みにしか帰らない
実家の銭湯には
青い富士山の変わりに
緑のペンキが色あせ
ボロボロに古びた
一匹の龍の壁画が
どん と
風呂場一面を支配している
田舎のせいか
夏場 ....
眠りの国の君は
きっととても美しいのでしょう
けれど
其れが見れなくて
私はとても哀しいのです
君の伏せられた瞼の裏
封じられた瞳の色は
平生の黒ではなくて
もっと
緑と ....
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『もしも私が死んだなら』
『心臓は息子に』
『両腕は娘に』
『薬指は妻に』
『唇を弟に』
『耳を妹に』
『そして』
『彼女に』
....
空気は夏色に染まり
空の青さにも透明が混じると
今年も
『カミナリ玉』
がハシリの時期になった
深緑に走る
黒い稲妻が
球体になって
八百屋に並ぶ
値段は詐欺 ....
冬になると
海水が凍って
氷の白い泥が海に溜まる
その中で薄くはった
産まれたばかりの流氷は
波の寝返りにあっさりと壊され
お互いを削りあい
まるで蓮の葉のような
角の取れた丸い薄い氷 ....
“死にませんよ”
春の夜明け
川ぞいの土手を歩いていると
魔王と出遭いました
鼻水をずるずるとすすっています
まだ寒い中僕を待っていたようです
とりあえずティッシュを渡すと
魔王 ....
【桜】
元来色の白かった私が
薄ら桃色に色づくのは
きっと貴方の仕業です
今年も
また
染まってしまいました
【金木犀】
はらはらと散らすのは
涙では無く
貴方の残 ....
【椿】
花嫁の紅を着飾って
貴方を待っているのです
この純潔が叶わぬならば
首を落として
夢に果てましょう
【水仙】
明後日の方向を見ているのは
白いうなじを見せるため ....
雪の降った夕暮れ
すっかり冷え込んだ空気の中で
黒いコートのポケットに手を入れると
黒い皮製の手帳にいきあたりました
そう
全てはこの手帳が始まりでした
死神の僕にとっては ....
“眼鏡の度があってませんよ”
俺には死神のじぃちゃんがいる
母さんの名付け親だ
父さんが死んでから
母さんは死神のじぃちゃんと二人暮しを始めた
俺が面倒を見ようかとも言った ....
旅立つ前に少し気持ちの整理をしておきたくて、少し感傷的にぼやきます。
帰ってきて気持ちが落ちついたら、削除してしまうかもしれません。
永遠の迷いの痕跡をして残しておくかもしれません。わからないけど ....
“真夜中に雨が降ると良いですね”
押さえ切れない怒りの中で
死神の言葉はそれだけしか聞こえませんでした
息子が一人暮らしを始めました
あの子にも手がかからなくなって
お互いに二つ ....
“言葉にはきちんと止めを刺してあげなさい”
俺のじぃちゃんは死神だ
母さんの名付け親だから
血が繋がっているわけではないけど
昔からよく遊んでもらって今も良く遊びに行く
命がかかわる ....
“かえりみちでほたるをとってきてください”
平仮名ばかりのメールが届いたのは
電車が駅にすべりこんだ瞬間でした
アドレスは息子のものでしたが
明らかに使いなれていない平仮名と文調子 ....
“白い蛾が産まれると困るのでしばらく家を出ます”
“追伸”
“白い蛾を見ても殺してはいけませんよ”
こんな置手紙を残して
死神が家から居なくなりました
いつも一緒にいた名付け ....
“夜霧よ今夜も有り難う”
風呂場からのん気に聞こえてくる鼻歌を尻目に
私は部屋を出ていきました
前前から
死神の電波加減や頑固さには目を瞑って来ました
でも今回ばかりは限界です
私 ....
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