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去年の年末から
喉の異物感がある


『真珠喉飴』



耳鼻科で鼻から内視鏡を入れても
内科で胃カメラを飲んでも

さっぱり原因がわからない

結局
気のせいだと言われて ....
鯉のぼりが

羨ましかった


『鯉のぼり』


我が家には
江戸時代から受け継ぐ
鯉のぼりがあった

もう骨董ものの古さなので
額に入れて飾るだけで
実際に吊るしたりはし ....
私は昔人魚だったのよ

全てが終わった後に彼女は言った

確かに
彼女の両足は
かかとから
太ももの後ろにかけて
大きく長い切り傷がある

王子様を捜しに2本の足を作って貰ったの ....
{引用=何十年か一度
季節が歪むと
東西の桜前線が逆転し
北から桜が咲きます

これを
紫桜前線と呼ぶのです}


{ルビ『紫桜前線』=しざくらぜんせん}

そんな記述を
小学 ....
天女様の羽衣は
潤んだような
緋色でないといけんのですよ

『{ルビ緋竹=ひちく}の王妃』―羽衣―

其の天女の人形が気に入ったですって?
はあ
お客さん
お目が高い
珍しいんでご ....
八月十五日になると
毎年訪れる浜辺があって
太平洋に面したそこへ
母を連れていくのが
夏の慣例だった


『砂上の手紙』



空襲で
顔面に火傷を負った母は
ひどい弱視で
 ....
台風一過の夕焼けには
いつだって
涙を浮かべて

手を振ってしまう


『台風のクジラ』


僕は台風の前日には
落ち着かない子供だった

ずんずんと迫ってくる
雲の足音や ....
鳳仙花

揺れる


『鳳仙花』


右目の古傷を開かれた
ぷつぷつ と
肉の裂ける音と共に
かさぶたを剥がされ
瞼の底へ

彼の残した右目が

入り込んだ


 ....
姫様は
長い長い
艶やかな御髪を持った

小町と呼ばれる姫様でした


『髪長小町』


私のお育てしたお姫様は
それはそれはお美しく
雪よりも透けるような白さに ....
いっそ
この身も
空に焼かれてしまえば善いのに



『夜光雲の{ルビ翅=はね}』


こう毎日毎日暑いと
夜明けの空には
夜光雲が
欠かすこと無く空を彩るのです

 ....
木蓮の花は
{ルビ宇宙=そら}を見上げる



『木蓮の咲く丘で』



花木好きの彼は
木蓮の花が一番好きで
白く甘い芳香が
中途半端にひらいた花びらから立ち上るのを
まる ....
一度で良いから
真珠の館に住んでみたい

というのは
我が家の小さな家蜘蛛が
梅雨時になると決まって呟く言葉だ


『真珠の館』

 
   漂白された空から降ってくる雨粒は
 ....
五月が終わると
雲の上にいる大きな孔雀が
ゆさゆさと翼を広げるので
太陽は陰り
うっすらと涼しくなって
雨が降ってくるのです


『六月の孔雀』


孔雀の羽根は
雨には強いの ....
滴る血潮からは
羽を持つ馬と


赤い花が生まれた


『母の日のメデューサ』



母にとって
父の面影を落とす私は
恐怖の塊でした

父が何をしたのか
母がどんな目 ....
春になると
見る夢がある



『春の首筋』


女が立っている

うりざね顔の整った貌をしてる
しかし
一番美しいのは

女の首だった

白百合がうつ ....
あの女房殿は

鶴なんかじゃ無かったのですよ


『夕鶴異聞』


そうですね
去年の秋からだったですかね
巷で有名な
『鶴女房』が来たのは
ええ
見事な反物でございましたよ ....
空は
地球を抱き込み
星の光を反射して
きらきら輝く
長い美しい髪を持っていました


『恋する空の髪』


宇宙風にあおられて
空の髪が凪ぐと
地上からはハケではいたような
 ....
{引用=
久方の            (日の光がのどかな春の日だ)
光のどけき春の日に       (それなのにどうして桜は忙しく散っていくのだろう)
静心なく      ....
綻びをつくろうために
いつも
針と糸を持ち歩いている


『影縫い』


性分なのか
ほつれた影を見ると
どうにも放っておけない
影の形は
人によって様々だ


明るく快 ....
『最後くらい主役をやったら?』

と母に言われてしまった



芝居をしている
キャリアとしては未だ全然浅いくせに2度目の演出・兼・役者の道を進もうとしている
うちの劇団としては初めて ....
この街が奇病に犯され始めたのは
冬が明ける前だった


『蒸発王』



最初の目撃は
髪の毛だったらしいが
全ての症状は同じだった


蒸発する


感 ....
私の右目には
鹿の眼球が入っている


『{ルビ瑪瑙=めのう}の牡鹿』


父は猟師だった
山里は畑もあるけど
狩猟も盛んで
私の父も
例にもれず鉛玉を放っていた  ....
帰省の列車の中で
こんな夢を見た


『蜻蛉の夢』


満月の夜
月下美人のつぼみの下で
細身の女性が横たわっている


彼女の肌は
食べ物が喉を通ったら
透けてしまうくら ....
こんばんは
良い夜です


『メメント・モリ』



何時頃からか
死にたい気分になると
身体中から
黒い霧が立ち上るのが見えました

霧は
冷たく
緩やかで  ....
雨の日に嫁入りした

嫁ぐことの条件は
髪を切ることだった


『暁の魔王の花嫁』

髪は
『神』に繋がるから
あの人は其れを嫌った

逆に
嫁いでからは
 ....
人間の骨が
画材に使われる様になって久しい


『心臓の一番近くで』


熱を通さずに
生肉を介して
摂取した骨を
分解しやすくなるように加工して
スズリで水に溶くと
白濁とし ....
恥ずかしいことに
世界がこんなに醜いなんて知ったのは
長いこと生きてからで
そんなことも感じず
のうのうと
幸福で腹を満たし
偽善で呼吸し
精錬潔白を詠っていた

自分が
一番醜い ....
最近の紙ってのは
紙じゃないね
ケント紙だとかルーズリーフだとか
下らない
にじまない紙の何処が紙だというんだ

紙はね

にじんでこそ紙の価値が問われるのさ
とく ....
我が家には
幼馴染の家蜘蛛がいる
子供の頃から一緒なので
年齢は私よりも年上なのだろうが
1.5cmの小さな蜘蛛だ
気が向けば晩酌くらいはする
私と蜘蛛はそんな仲だ


『夜雪酒』
 ....
{ルビ梔子=くちなし}の満開の下へは
決して近寄ってはいけない



『クチナシの木の満開の下』




子が出来ぬ
という理由で離縁された女は
梔子の花しか食べられなくなった ....
あおばさんの蒸発王さんおすすめリスト(63)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
真珠喉飴- 蒸発王自由詩2+*12-7-27
鯉のぼり- 蒸発王自由詩6*11-5-5
マーメイド- 蒸発王自由詩509-6-6
紫桜前線- 蒸発王自由詩4*08-3-30
緋竹の王妃- 蒸発王自由詩2*07-10-24
砂上の手紙- 蒸発王自由詩9*07-8-14
台風のクジラ- 蒸発王自由詩907-8-7
鳳仙花- 蒸発王自由詩5*07-7-25
髪長小町- 蒸発王自由詩407-7-11
夜光雲の翅- 蒸発王自由詩4*07-7-5
木蓮の咲く丘で- 蒸発王自由詩7*07-7-2
真珠の館- 蒸発王自由詩807-6-12
六月の孔雀- 蒸発王自由詩407-6-4
母の日のメデューサ- 蒸発王自由詩9*07-5-29
春の首筋- 蒸発王自由詩207-4-4
夕鶴異聞- 蒸発王自由詩14*07-3-28
恋する空の髪- 蒸発王自由詩507-3-24
静心なく- 蒸発王自由詩8*07-3-11
影縫い- 蒸発王自由詩6*07-3-10
主役について- 蒸発王散文(批評 ...3*07-3-7
蒸発王- 蒸発王自由詩13*07-2-25
瑪瑙の牡鹿- 蒸発王自由詩8*07-2-23
蜻蛉の夢- 蒸発王自由詩8*07-2-17
メメント・モリ- 蒸発王自由詩9*07-2-15
暁の魔王の花嫁- 蒸発王自由詩8*07-2-11
心臓の一番近くで- 蒸発王自由詩10*07-2-8
義眼の彼岸花- 蒸発王自由詩6*07-2-1
或る紙すき職人の遺言- 蒸発王自由詩10*07-2-1
夜雪酒- 蒸発王自由詩8*07-1-23
クチナシの木の満開の下- 蒸発王自由詩11*07-1-15

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