すべてのおすすめ
読みかけの詩集を逆さまにすると
文字の列たちは
不ぞろいのビルディングになりました
そして
下のほうにあった余白は
広い空に
しばらくその様子に見とれていましたが
何かが足りない気が ....
最後の人が飛び降りたまま
裏返ったブランコの鎖が歪に静止している
翌日になれば元に戻される、それだけのこと
わたしは、もうずっと公園にいない
だから知らない
ブランコ ....
化石になった受話器から
感傷が漂って来る
あの日から忍び寄るいつもの夏を
おぼろげに感じかけた矢先だというのに
僕は夏を失ったのだ
あの日からという夏を
あの日
やがて歴史に ....
「ママ、起きてよ!夜だよ!」
こどもたちの声がウルサイので、わたしはやっと目を覚ました。
こどもって、なんでこんなに毎晩早起きなんだろう。
そうか、夜か・・・。
そろそろ起きなくちゃな。
「 ....
ゼロバンメにすきといったら
ほれられた。
そのうち白けて
にげられた。
なんもない訳じゃないんだよってば。
それがなきゃ
いちばんだってないんだよってば。
わかんない奴だ ....
おれは海を釣ろうとする
海からおれを釣ろうとする
あなたは海を産もうとする
ひとの不思議を産もうとする
ぐるり
この星が太陽をひとまわりして
海辺の町に
また
桜が咲いた
....
飛行場だった廃墟に忍び込むと
僕は思わず
飛行機になってしまう
両手を広げ
雑草の生い茂った滑走路を
全力疾走
夜風は冷たくて気持ちがいいな
思わず顔が微笑んでしまう
いつの間にか「キ ....
にゃんでか知らにゃいけど
「にゃににゅにぇにょ」
が言えにゃくて、全部
「にゃににゅにぇにょ」
ににゃる
日常生活に支障はにゃいもにょにょ
こにょままでは
僕が僕でなくなってしまう
....
一本
二本
三本
指が沈んでる
あなたに触れようとしたら
全部
落ちてしまった
水槽で泳ぐ
さみしそうな指に
ゆらゆらと
水草がからみつく
しょうがないので
エ ....
(1)
僕は眩暈をおこし倒れゆく途中、眩暈の原因はこの部屋の絨毯の模様がどうにも見慣れない形に変わってしまったからだということに気づき、しばらく斜めになったまま考察を続けた。
(2 ....
望遠鏡で
月を覗いたら
傷が付いていた
のは
望遠鏡の方で
月は今でも
美しく欠けていて
もぐらが穴を掘るわけは
ほんとは空が見たいから
トンボが空を飛ぶわけは
海を泳いでいたいから
夕日が海に沈むのは
赤く染まる波々の
向こうにおうちがあるからで
とうさん帰 ....
シルクハットの手品師は
自分の姿を消しました
種も仕掛けもなかったので
もう元には戻らないのでした
相棒の鳩は
空を飛んでいます
好き?
と彼女に聞かれたので
好き
と彼女に言う代わりに
100行の詩を書きました
それはそれは思いを込めて書きました
100行じっくり読んだ彼女が言いました
で ....
マウンド上で大きく振りかぶった
金田正一の投げたストレートを
牛若丸といわれた吉田義男が
小気味よく弾き返すと
白球は強いゴロになって
三遊間を抜けようとする
あらかじめ心持ち三塁より ....
ボウアは めっくりぽえるのが 好き好き
だからいつも かぷりちゃう
いつも どこに あたびが
ワルツ ワルツ まむつよ
それ なあに?
「おかさん の おっぱい めるめろ!」
....
みえこが
おなかの赤ちゃんに話しかけ
仮の名を呼んでいる ....
男の子だったら
悠人という名がいい
ゆうと 悠然と人生をわたるひと
みえこも大賛成
女の子だったら
悠帆にしよう
ゆうほ 悠々と海をいく帆船
あるいはUFO 未確認飛行物体
みえこは猛 ....
その本を手に取るたびに
同じページばかり開いていたから
今では机に置くだけで
パラパラと そこへたどり着く
私の心の傾きが
そのまま しおりになっている
眠くて仕方が無いと母は言う
こんなに眠くて仕方が無いのは
悪いことが起きるから
それとも脳梗塞なのかしらん
雑煮の鍋を温めながら
迷信深い島の年寄りの顔になる
庭には
他の樹木とは、 ....
信号機に紫色とか茶色とかがあればいいのに
進め、注意しろ、止まれ、だけじゃなくて
迷っていいぞ、後退も時にはありだぞ、って
誰だって言ってほしいもん
言ってほしいもん
朝の土手のチンピラの遠吠えから(採録)
*
ちょっとだけ
オレのはなしをきいてくれ
土手をあるいていたら
ひとりばあさんがいたんだ
ばあさん
さむいのに
はん ....
踏んだ
二度、踏んだ
違う
全然、違う
今、キリギリスの話は全然していない
見知らぬ都会の夜
人ごみをかき分け
「すみません、手相の勉強をしてる者ですが」
の声を会釈でよけ
{ルビ潜=もぐ}りこんだカフェでコーヒーを1杯
( 日中の{ルビ時間=とき}は遠き夢な ....
ありがとう
うまかった
ありがとう
まずかった
いつも
いつも
飢えていて
ありがとう
食べてきた
皿盛りの肉
絞った蜜
犬の舌焦げ
ありがとう
母の ....
いまはもうない家の
いまはもうない裏の畑で
空いっぱいに舞っていた
アキアカネ。
物干し竿に 洗濯物に
それをとりこもうとしてる母の髪に
それを見ている私の肩に
アキアカネ。
....
君がいつまでも気にして
うつむいているので
木の精だよ
気にするな
なんて言うわけないのだが
君にはそう聴こえたようで
わしは百歳じゃ
と低い声で
木の精の物真似をする ....
不治の病にかかった
「愛している」と言おうとすると
「うすらトンカチ」と言ってしまうらしい
もう
うすらトンカチと言える君は
そばに居ない
ああ、うすらトンカチが
死語でよか ....
牛乳を買ってきたつもりだったのに
袋に入っていたのは
それはそれは立派な
乳牛だった
妻は、こんなものどうするつもり、と怒りまくり
娘は、牛さんが来た、と大喜びをした
毎朝、新 ....
くちびるに海苔がついているから
愛してる
って言葉も
何だかシャケっぽい
芝生にはたくさんのシートがひかれて
僕らのピクニックは
その一番隅っこ
風で泳いでいかないように
いろいろ ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9